南米・パタゴニア氷原における最近の氷河変動

  • 安仁屋 政武
    筑波大学地球科学系
  • 佐藤 宏昭
    筑波大学大学院環境科学研究科 現在:(株)パスコシステム技術センター技術一部

書誌事項

タイトル別名
  • Recent glacier variations in the Patagonia Icefield.
  • ナンベイ パタゴニア ヒョウゲン ニ オケル サイキン ノ ヒョウガ ヘンドウ

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抄録

南米・南パタゴニア氷原の溢流氷河の1944/45年以降の変動について,種々のリモートセンシング・データを使用して明らかにし,その要因について考察した.北パタゴニア氷原では,22の溢流氷河について1945-75年,1975-86年,1986-91年,1991-94年の変動を明らかにした結果,全体として1991までは後退速度が加速的に増加したが,91年以降は後退速度が遅くなったことが判明した.この理由の一つとして,1960年代後半から1970年代初めにかけての降水量の増加が考えられている.南パタゴニア氷原では最近48の溢流氷河に関してイベントリーが作成され,多くの氷河で1945年から86年までの数時期の変動が明らかにされた.北氷原と比べて一般に後退速度が大きい(約3倍)が,一方ではほとんど変動していない氷河も多く存在し,Pio XI氷河(南米最大)のように8kmも前進して,面積が60km2増加した特異な氷河もある.またMoreno氷河は前進・後退を繰り返しており,ほぼ平衡状態にあることが判明した.このように変動のバラツキが大きいのが特徴である.これは,微妙な気候変動の他に,AAR,平衡線付近の氷河表面の勾配,カービングがフィヨルドか氷河湖かの違いとその水深,などが影響している結果と考えられる.

収録刊行物

  • 雪氷

    雪氷 58 (1), 43-52, 1996

    公益社団法人 日本雪氷学会

被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (40)*注記

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