釜石における鉱工業地域社会の内部構造とその発達過程

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タイトル別名
  • The Internal Structure of Kamaishi Mining-Manufacturing Community and Its Formation Processes
  • カマイシ ニ オケル コウコウギョウ チイキ シャカイ ノ ナイブ コウゾウ

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抄録

本稿は,わが国における近代鉄鉱工業の発祥地である釜石を対象に,鉄鉱工業地域社会の内部構造の発達過程を明らかにした.その際,宇部・日立の単一鉱工業地域社会における内部構造の発達過程と比較し,その類似性と相違性に留意した.<br> 釜石におけるマニュファクチュア段階での内部構造は,藩営時代の番所を中心に生産機能が展開する一極型であった.官営時代には役所を中心に,生産に加えて居住機能が展開する一極型となった.<br> 近代資本の田中製鉄所時代になると事務所を中心に生産,商業・サービス,居住の3機能からなる一極型圏構造の工業地域社会に,さらに銑鋼一貫生産体制の導入によって,一連極型圏構造の工業地域社会に発達した.生産増大に伴う生産機能地域の拡大は商業・サービス機能と居住機能を外方に押し出し,関連地域社会と重なる形で都市化を促進させ,一連極型圏構造の工業都市に成長した.<br> 宇部・日立が工業の一層の発展によって都市の性格を強くしたのに対し,釜石は工業の衰退に伴う跡地の都市的利用などによって都市の性格に変化した.<br> 単一鉱工業地域社会における内部構造の発達は,宇部・日立に典型的に見られるように,一極型から多極型へ,さらに一核心型圏構造への展開である.それに対して,釜石にあっては一極型から一連極型圏構造へと展開したが,一核心型圏構造の発達を見なかった.これは銑鋼一貫生産形態という大規模装置型生産の特性と地形による制約に起因する.

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