縄文時代貝塚人男性の第一中手骨における左右差

  • 坂上 和弘
    東京大学理学系大学院生物科学専攻人類大講座

書誌事項

タイトル別名
  • Bilateral asymmetry of the first metacarpal bone in the Jomon shellmound males
  • ジョウモン ジダイ カイヅカジン ダンセイ ノ ダイ1 チュウシュコツ ニ オケル サユウサ

この論文をさがす

抄録

現代日本人と縄文時代貝塚人男性の第一中手骨を用いて最大長, 関節の大きさ, そして中央断面特性値における左右差を調べた。現代日本人では最大長以外のすべての変数で左右に統計的有意差があった。各変数間の左右差の相関は断面二次モーメントIY, 断面二次極モーメントJと関節幅に見られたがこれは母指対立筋の強く働いている側が関節の可働域も広かったことを意味している。また第一中手骨と上腕骨における左右差の相関では, 第一中手骨の断面二次モーメントIX以外の断面特性値同士は有意な相関が見られた。縄文時代貝塚人の第一中手骨では最大長と関節幅に有意な左右差が見られたが, 断面特性値には見られなかった。縄文時代貝塚人の上腕骨における断面特性値に左右差がみられなかったこととあわせて考慮すると, 縄文時代貝塚人は20歳前後までとそれ以後では左右の分業による上肢運動の質的な差違があった可能性があり, 成人後は母指を対立しながら上腕に負荷のかかる運動を左右同等に行っていた可能性が高い。ただし, 右の方が第一中手骨および基節骨の可動域が広く屈曲時の負荷が高いため, 左右の手の分業は行われていた可能性がある。

収録刊行物

被引用文献 (1)*注記

もっと見る

参考文献 (22)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ