地中のアブラゼミ幼虫の幼虫室内に生息するオオフォルソムトビムシの生態

  • 前園 泰徳
    東京大学大学院農学生命科学研究科生物多様性科学研究室
  • 宮下 直
    東京大学大学院農学生命科学研究科生物多様性科学研究室

書誌事項

タイトル別名
  • <i>Folsomia candida</i> (Collembola: Isotomidae) Living in the Nest Cell of a Cicada <i>Graptopsaltria nigrofuscata</i> Underground
  • Folsomia candida(Collembola:Isotomidae)Living in the Nest Cell of a Cicada Graptopsaltria nigrofuscata Underground

この論文をさがす

抄録

<p>著者らは,千葉県鎌ヶ谷市の梨畑において,多数のオオフォルソムトビムシ(以下トビムシ)が地下1m以下にまで分布するアブラゼミの幼虫室内に生息することを発見した。全幼虫室の約46%でトビムシが採集されたが, 幼虫室外の土壌中からは全く採集されなかった。トビムシが採集されたセミの幼虫室の平均の深さは, 平均61cmの深さで, 最も深い場所は128cmであった。 判別分析により, トビムシの生息が認められた幼虫室と生息が認められなかった幼虫室のグループ間には,セミの幼虫と幼虫室の形質に有意差がないことが明らかになった。トビムシは,土壌中の浅い場所にある幼虫室内に偶然侵入し,その後はトビムシ単独では移動不可能な深度までセミ幼虫とともに移動していると考えられる。</p><p>幼虫室がトビムシ単独では移動できないような深い場所に隔離されていること, トビムシの寿命がアブラゼミの幼虫期間より短いこと, 本種は単為生殖が可能であること, さらに1つの幼虫室内においてトビムシの体サイズが大きくばらついていたことを考慮すると, 一度幼虫室内に侵入したトビムシは,アブラゼミの幼虫期間が終わるまで幼虫室内で繁殖を繰り返し, 幼虫が地上に出る前後にのみ,自力での移動が可能な地表近くに再び出てくることができると考えられる。</p><p>重回帰分析の結果, 幼虫室の体積がトビムシの個体数を最もよく説明する要因であるであることが明らかになった。したがって, トビムシの個体数は幼虫室の体積によって制限されていることが示唆された。</p>

収録刊行物

  • Edaphologia

    Edaphologia 66 (0), 51-57, 2000

    日本土壌動物学会

参考文献 (27)*注記

もっと見る

キーワード

詳細情報

問題の指摘

ページトップへ