呼吸器感染症患者分離菌の薬剤感受性について (1997年)

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  • SUSCEPTIBILITIES OF BACTERIA ISOLATED FROM PATIENTS WITH LOWER RESPIRATORY INFECTIOUS DISEASES TO ANTIBIOTICS (1997)

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抄録

1997年10月~1998年9月の問に全国17施設において, 下気道感染症患者440例から採取された検体を対象とし, 分離菌の各種抗菌薬に対する感受性及び患者背景などを検討した。これらの検体 (主として喀痰) から分離され, 起炎菌と推定された細菌512株のうち503株について感受性を測定した。分離菌の内訳はStaphylococcus aureus 100株, Streptococcus pneumoniae81株, Haemophilus influenzae85株, Pseudomonas aeruginosa (non-mucoid株) 71株, Pseudomonas aeruginosa (mucoid株) 27株, Moraxella subgenus Branhamnella catarrhalis33株, Klebsiella pneumoniae17株などであった。S. aureus 100株のうちOxacillinのMICが4μg/ml以上の株 (Methicillin-resistant S. aureus: MRSA) は55.0%検出され, 1996年の67.3%に比べ10%以上減少した。ArbekacinとVancomycinはMRSAに対して強い抗菌力を示し, 本年度もABK耐性株やVCM低感受性株は検出されなかった。S. pneumoniaeに対する抗菌力はカルバペネム系薬剤が強くPanipenem, ImipenemのMIC80は0.063μg/mlであった。またペニシリンに低感受性を示す株 (Penicillin-intermediate S. pneumoniae: PISP+Penicillin-resistant S. pneumoniae: PRSP) の分離頻度は1995年の40.3%から緩やかに減少し本年度は30.9%であった。H. influenzaeM.(B.) catarrhalisの各薬剤に対する感受性はいずれも良好であったが, 1995・1996年に比べ両菌種ともCeftazidimeに対して感受性の低下が認められた。P. aeruginosaは多くの薬剤に耐性化を示す傾向にあるが, ムコイド産性株にはMeropenem, Imipenem, Tobramycinの抗菌力が強く, ムコイド非産性株にはTobramycinとCiprofloxacinの抗菌力が比較的強かった。K. pneumoniaeはAmpicillinを除く薬剤に対して良好な感受性を示し1996年の成績と比較しても良かった。<BR>患者背景については, 年齢別の分布で70歳以上の高齢者が年々増加しており, 本年度は45.5%を占めた。疾患別の頻度ではあまり変化はなく, 細菌性肺炎が33.6%, 慢性気管支炎が29.1%と多かった。これら感染症からの抗菌薬投与前後における分離菌株数は, 慢性気管支炎では抗菌薬投与後に比べ未投与の症例からの分離株数が多いが, 細菌性肺炎では1995年以降で投与後での分離株数が投与前より多くなっており, 薬剤投与後におけるS. aureusP. aeruginosaの分離頻度の増加は, これらの菌の薬剤感受性低下傾向を示唆すると思われる。抗菌薬の投与の有無投与日数ごとの分離菌及び投与薬剤種類別の分離菌についてみると, 投与前に多く分離された菌はS. pneumoniae24.5%, H. influenzae21.4%, S. aureus 18.4%, P. aeruginosa 12.2%などであった。S. aureusは投与15日以上で減少したが, P. aeruginosaは薬剤投与により減少することはなく15日以上では47.8%分離された。投与された薬剤の種類ではペニシリン系及びセフェム系薬剤の投与症例からの分離菌は S. aureusが最も多く31.7~58.3%を占めた。またマクロライド系薬剤投与例ではP. aeruginosaの分離頻度が高く50%近くを占めた。

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参考文献 (32)*注記

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