低血糖を伴い急速な増大を呈した高分子型insulin‐like growth factor‐II(IGF-II)産生肝細胞癌の1例

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タイトル別名
  • A case of high molecular weight insulin-like growth factor-II (IGF-II) -producing hepatoma associated with frequent hypoglycemia and rapid-growth

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抄録

症例は69歳の女性. 空腹時の手指振戦および冷汗を主訴として当科へ入院した. 入院時の血液検査は低血糖と肝硬変を示唆した. 肝炎ウイルスマーカーは, HBs抗原陽性, HBe抗体陽性, HCV抗体陰性. 血中インスリンは測定感度以下を示し, insulin-like growth factor-II (IGF-II) は高値であった. 画像では肝右葉に直径8.0cmの腫瘍を認め, 生検にてこれを中分化型肝細胞癌と診断した. 更に, 腫瘍細胞はIGF-IIの免疫染色に陽性で, ウエスタンブロットでは正常型IGF-II以外に高分子型IGF-IIが検出された. 抗癌剤の動注療法により, 繰り返す低血糖発作は一時的にコントロールされたが, 腫瘍の急速な増大に伴って再び頻繁となった. 短期間に腫瘍は肝全体を占めるに至り, 肝不全で患者は永眠した. 肝癌は稀に低血糖を合併するが, 一部の症例においてこの原因は腫瘍細胞の産生する高分子型IGF-IIであると推測されている. 一方, 低血糖を合併する肝癌は急速に増大するため予後不良であると報告されている. 今回我々は, 急速な増大を呈した低血糖合併肝癌において, 腫瘍細胞の高分子型IGF-II産生を確認した. 高分子型IGF-IIは低血糖を誘導するのみならず, 腫瘍細胞に対する増殖因子として働く可能性を示唆すると考え報告した.

収録刊行物

  • 肝臓

    肝臓 41 (5), 346-351, 2000

    一般社団法人 日本肝臓学会

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (22)*注記

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