高度の小葉間胆管消失像を示したチオプロニン起因性肝障害の1男性例

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タイトル別名
  • A man case with thiopronine induced hepatopathy showing advanced interlobular bile duct elimination image.

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抄録

症例は46歳, 男性で, 長期間にわたり高度肝内胆汁うっ滞を呈した. 本例はアルコール性肝障害に対してTiopronin (N-2-mercaptopropionyl-glycine) の投与を受けており (総量: 9, 600mg), Tiopronineに対するDLSTが陽性を示したことからTiopronin誘導性の薬剤性肝障害例と考えられた. 本例にみられた高度胆汁うっ滞の成因について病理組織学的検討を行ったので報告する. 肝生検組織には著明な肝内胆汁うっ滞像がみられるとともにリンパ球浸潤を伴う小葉中心性の壊死炎症反応が強くみられた. 門脈域にはpiecemeal necrosisを伴う中等度のリンパ球浸潤像をみるとともに小葉間胆管上皮細胞の変性像や小葉間胆管消失像を多数認めた. 肝細胞と小葉間胆管上皮細胞におけるβ2-microglobulin (β2-MG) やHLA-DRの発現態度を免疫組織化学的に検討した結果では, 小葉中心性の壊死炎症巣周囲の肝細胞や門脈域周囲の肝細胞, さらには小葉間胆管上皮細胞にもβ2-MGの発現増強を認めたが, これら上皮細胞でのHLA-DRの異所性発現はみられなかった. また, 門脈域や小葉内壊死炎症巣に浸潤するリンパ球は主としてMT-1陽性のT細胞より構成され, UCHL-1陽性の活性型T細胞が多数認められた. 以上の所見から本例における持続性高度胆汁うっ滞の成因として小葉問胆管の炎症性破壊が重要な役割を果したことが, さらに, Tiopronin誘導性の肝細胞の壊死炎症反応および小葉間胆管の炎症性破壊に細胞性免疫を介する細胞障害機序が関与した可能性が示唆された.

収録刊行物

  • 肝臓

    肝臓 38 (7), 428-435, 1997

    一般社団法人 日本肝臓学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (29)*注記

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