ピリドキシン内服が著効した乳児鉄芽球性貧血

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タイトル別名
  • An Infant Case of Sideroblastic Anemia that Responded to Oral Pyridoxine.

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抄録

症例は8カ月男児。顔色不良を指摘され,入院。入院時検査所見は赤血球数156×104l, Hb 3.5 g/dl, 平均赤血球容積66 flと高度な小球性低色素性貧血を認めたが,網状赤血球は0.5 ‰と低く,血清鉄は433 μg/dlで膵外分泌不全は認めなかった。骨髄所見は赤芽球の過形成がみられ,環状鉄芽球を18%に認めた。電顕所見では赤芽球のミトコンドリア内に鉄顆粒の沈着を認めた。以上より鉄芽球性貧血と診断し,ピリドキシン(50 mg/日)内服投与を開始したところ,網状赤血球は4日後には97 ‰と上昇し,貧血の改善もみられた。ピリドキシンの内服は2カ月間で中止したが,以後1年以上寛解を維持している。先天性鉄芽球性貧血は比較的稀な疾患であり男児に多くX-染色体連鎖性劣性遺伝と考えられている。近年,その原因のひとつとしてδ-アミノレブリン酸合成酵素遺伝子の点突然変異が発見されており,本症例でも同遺伝子のexon 5に点突然変異が認められた。乳児から幼児期は,摂取鉄量の不足により鉄欠乏性貧血が多くみられるが,鉄芽球性貧血も小児の低色素性貧血の鑑別診断の一つとして考慮すべきと思われる。

収録刊行物

  • 臨床血液

    臨床血液 40 (8), 667-672, 1999

    一般社団法人 日本血液学会

参考文献 (15)*注記

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