上咽頭悪性腫瘍の臨床的観察

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タイトル別名
  • ジョウ イントウ アクセイ シュヨウ ノ リンショウテキ カンサツ
  • [Clinical studies of malignant nasopharyngeal tumor].

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抄録

1. 研究目的<BR>上咽頭に発生する悪性腫瘍は特異な臨床症状を呈し, 早期発見が困難であり, きわめて予後の悪い疾患である. 最近は発癌の問題とからんでウィルス学的研究が進んでいる. そこで私達は本腫瘍の臨床像を明らかにするため各種の統計的観察を試み, 諸家の報告と比較検討した.<BR>2. 研究方法<BR>昭和33年1月より昭和46年6月までに大阪大学医学部附属病院耳鼻咽喉科および放射線科を受診した上咽頭悪性腫瘍158例を資料とし, その発生頻度, 性別年令別頻度, 初発症状, 初診時症状, 腫瘍の発生部位, 病理組織診断, 治療法および予後について調査した. なお病期分類をも試みた.<BR>3. 研究結果<BR>1) 症例158例で, 発生頻度は年平均, 約11.7例であった.<BR>2) 男性111例, 女性47例で男女比, 約7: 3であった. 年令分布は7才より73才にわたり, 40~60才台で67%を占め年令層がやや若かった.<BR>3) 初発症状は, 耳症状22.6%, 鼻症状29.1%, 頸部症状30.7%, 脳神経症状15.6%であった.<BR>4) 初診時症状は, 耳症状36.7%, 鼻症状45.6%, 脳神経症状 (頭痛を含む) 39.2%, 頸部症状67.0% (片側37.3%, 両側29.7%) でありかなりの病巣進展を示していた.<BR>5) 脳神経症状はV (26例), VI (21例), III (17例), IX (14例), X (14例) の順で多かった.<BR>6) 腫瘍発生部位は側壁 (右49例, 左40例56.3%) 天蓋部 (58例36.7%) であった.<BR>7) 病理組織学的分類は癌腫70.9% (扁平上皮癌が主), 肉腫24.1% (細網肉腫が主) で癌腫が多かった.<BR>8) 病期分類は癌腫 (UICC基準による) ではstage I+II: 26.3%, stage III+IV: 73.7%, 肉腫 (Kaplanの分類による) ではstage I+II: 91.7%, stage III+IV: 8.3%であった.<BR>9) 治療法として放射線療法を主体とした. 3年粗生存率46.7%, 5年粗生存率34.9%であり, 癌腫では5年粗存率29.5%, 肉腫では47.4%であった. 頸部リンパ節転移を認めない群の5年粗生存率は52.4%, 片側に認める群では28.1%, 両側に認める群では23.1%であった. 病期分類別に5年粗生存率をみると, 癌腫ではstage I 45.5%, stage II, III, IVは33.3%, 20.0%, 14.3%の順であり, 肉腫ではstage I 57.1%, stage II 45.5%でstage III+IV 0%であった.

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