エトレチナート長期内服が骨および関節に与える影響 ―低~中年齢層における検討―

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エトレチナート長期内服による骨および関節に与える影響をより正確に知るため,低~中年齢層における骨,関節変化について,同世代コントロールと比較検討した.北海道大学皮膚科通院中のエトレチナート長期内服患者17例(平均年齢29歳,平均総投与量40.3g,平均総投与期間7年5ヵ月)の全身の骨および関節所見を,エトレチナート内服の既往がない対照群10例(平均年齢29歳)と対比して検討した.単純X線写真に関して,対照群では6例(60.0%)に加齢と弱い相関を有する骨棘形成が認められた.内服群では10例(58.8%)に加齢と弱い相関を有する骨棘形成が認められ,出現頻度に関しては対照群との間に有意差を認めなかった.しかしエトレチナート内服群においては,骨および関節の異常所見の出現頻度と投与量および投与期間との間に危険率p<0.10の弱い相関を認めた.すなわち,骨変化の多い症例は総投与量が多く,投与期間も長い症例に多い傾向があった.これらのX線写真で異常所見を示した部位には,骨シンチにおけるテクネシウムの集積を認めなかった.また血清カルシウム,リンおよびアルカリフォスファターゼ値にも有意な変化を認めなかった.一方,CXD法を用いた骨塩量の測定では,統計的比較が可能であった30歳代男子において内服群で中手骨骨密度(∑GS/D値)が正常値に比べ有意に低かったが,中手骨骨皮質幅(MCI)には有意な変化を認めなかった.本研究の対象とした症例に関する限り,X線写真上で認められた異常所見が,加齢以外の原因による病的状態を示しているという証拠は得られなかった.しかし薬剤の副作用は厳重に監視されなければならなことは言うまでもなく,high responderの症例に関する個別的検討や,骨密度に対して与える効果の検討などが今後の課題として指摘された.

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