呼吸器感染症患者分離菌の薬剤感受性について(1990年)

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  • SUSCEPTIBILITIES OF BACTERIA ISOLATED FROM PATIENTS WITH RESPIRATORY INFECTIOUS DISEASES TO ANTIBIOTICS(1990)

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抄録

我々は1981年以来全国各地の病院・研究施設と共同で呼吸器感染症分離菌を収集し, 分離菌の各種抗菌薬に対する感受性, 患者背景と分離菌などを経年的に調査してきた1~8)。今回は, 1990年度の調査結果を報告する。<BR>1990年10月~1991年9月の間に全国20施設において, 呼吸器感染症患者507例から採取された検体を対象とした。それらの検体 (主として喀痰) から分離され, 起炎菌と推定された細菌は654株であった。このうち, staphylococcus aureus87株, Streptococcus pneumoniae 118株, Haemophilus influenzae 124株, Pseudomonas aeruginosa (Non-mucoid) 84株, Pseudomonas aeruginosa (Mucoid) 37株, Moraxella subgenus Branhamella catarrhalis60株, Klebsiella pneumoniae24株, Escherichia coli12株など617株に対する各種抗菌薬のMICを測定し, 細菌の薬剤感受性を調査した。<BR>主要菌株の抗菌薬に対する感受性は, 各薬剤とも前年とほぼ同様の成績を示した。S. aureusではOxacillinのMICが4μg/ml以上の株 (Methicillin-resistant S. aureus) が42.5%を占め, 前年に比べ耐性菌の発現頻度は同程度で急激な上昇は認められなかった。<BR>又, 患者背景と感染症と起炎菌の推移等についても検討した。<BR>患者背景については, 年齢別の分布では高年齢層の感染症が多く, 60歳以上が67.8%を占め, 高齢者の割合の増加が顕著であった。疾患別の頻度では, 細菌性肺炎, 慢性気管支炎がそれぞれ31.6%, 26.8%と多く, 以下気管支拡張症, 気管支喘息 (感染併発, 以下同様) の順であった。<BR>疾患別の起炎菌の頻度についてみると, 細菌性肺炎ではS. aureus 19.0%, H. influenzae16.7%, S. pneumoniae 15.4%, 慢性気管支炎ではS. pneumoniae 27.8%, H. influenzae27.2%, 気管支拡張症ではH. influenzae 13.8%, P. aeruginosa 41.3%, 気管支喘息ではH. influenzae18.6%, S. pneumoniae 28.8%, M.(B.) catarrhalis 16.9%が上位を占めた。<BR>抗菌薬の投与の有無, 日数ごとにみた分離菌についてみると, 投与前に分離頻度が多い菌はS. pneumoniae, H. influenzae, M.(B.) catarrhalisである。一方, S. aureus, P. aeruginosaでは逆に投与後に頻度が多い傾向を示した。又, 投与期間が15日間以上の例では, 前年同様P. aeruginosaの頻度が多かった。<BR>S. aureusについてみると, 細菌性肺炎においてMRSAの分離頻度は51.3% (20/39) であった。因子・手術の有無によるMRSAの分離頻度は, 「有り」で49.2% (29/59), 「無し」で28.6% (8/28) となり, 因子・手術の有りの例でMRSAの分離頻度が高い傾向を示した。抗菌薬の投与前・後におけるMRSAの分離頻度は「投与前」で19.6% (10/51), 「投与後」で75.0% (27/36) となり, 抗菌薬投与後で明らかに高値を示した。

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参考文献 (19)*注記

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