高齢者虚血性心疾患治療の最近の進歩

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タイトル別名
  • Recent Progress in the Treatment of Ischemic Heart Disease in the Elderly.
  • コウレイシャキョケツセイ シンシッカン チリョウ ノ サイキン ノ シンポ

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抄録

高齢者虚血性心疾患では, 冠動脈病変とともに, 脳動脈や頸動脈, 腎動脈, 大動脈などにも広範に動脈硬化性変化が存在することが多い. また重症冠動脈病変が存在しても胸痛を欠如したり, 非典型的な症状しか示さないことも少なくない. 高齢者虚血性心疾患ではこれらのことを念頭において, 全身的な観点にたって診断・治療を行う必要がある.<br>慢性虚血性心疾患では, 生活の質 (QOL) の向上と, 生命予後の改善, を目指した治療を行う. 高脂血症, 高血圧, 糖尿病, 喫煙などのリスク因子の包括的な是正 (risk reduction) は高齢者においても重要である. 多くの大規模臨床試験により, いずれのリスク因子の是正も新たな心血管事故の防止につながることが証明されたからである. さらに心機能不全に対しては症状の有無にかかわらず, ジギタリス, 利尿薬, ACE阻害薬が基礎薬として投与される. また, アスピリンおよびβ遮断薬の予後改善効果も証明されている. インターベンション治療の技術的な進歩も大きく高齢者においても高い成功率が得られるようになった. ただ高齢者では, 重大な合併症や, 長期観察における再PTCAやCABGの頻度は高い. 高齢者の冠動脈バイパス術では術中術後の脳合併症が高頻度となる. しかし, 人工心肺を用いないで, 内胸動脈を直接左前下行枝に吻合するMIDCABの出現により, 高齢者における多くの問題を避けることも可能となっている.<br>急性心筋梗塞の治療では, 致死的不整脈の予防と治療と, 再灌流療法による梗塞範囲の縮小, を目標とする. プレホスピタルや一般病院における血栓溶解療法 (静注・冠注) と高次施設におけるPTCAなどのインターベンション治療が行われている. 発症後できるだけ早期 (6時間以内) の実施が重要である. 高齢者では脳出血の防止を念頭において適応を決定する. アスピリンやACE阻害薬の併用も重要である.

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