線虫の寿命とその規定遺伝子 The Regulatory Genes of Nematode Lifespan

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抄録

老化とは「時間の経過とともに起こる不可逆的な自然崩壊の過程」であり, 発生・分化とは異なってそのプロセスに遺伝子が積極的に関わっているとは考えられていなかった. ところが近年, 遺伝子解析技術の進歩と相まって, 老化が単なる自然崩壊の過程ではなく, 老化を促進したり抑制する遺伝子が存在し, 環境因子と複雑に絡み合いながら老化の速度を調節し, 寿命が決定されていることが明かになり始めた. この新しい老化研究の進展に線虫の一種である <i>Caenorhabditis elegans (C. elegans</i>) が大きく貢献することになった.<br><i>C. elegans</i> から分離された長寿命突然変異体 (<i>age-1, daf-2</i>) は野生株に比べて酸素や熱, 紫外線に対して強い耐性を示し, 原因遺伝子がエネルギー代謝の中でシグナル伝達に関わるホスファチジルイノシトール三リン酸キナーゼ (PI3キナーゼ) とヒト・インシュリン受容体と相同性があることが明らかとなった. 一方, 酸素に高い感受性として分離された突然変異体 (<i>mev-1</i>) は酸素濃度に依存して寿命を短縮させる. この原因遺伝子がミトコンドリアに存在するシトクロームb560 (電子伝達系複合体IIのサブ・ユニット) であり, これもエネルギー代謝に関係していた. これらのことから, <i>C. elegans</i> の寿命がエネルギー代謝と, その副産物して産生される酸素による傷害に関係していることを示唆している. 老化の速度や寿命は, それを促進する活性酸素の量とその毒性に対抗する防御機構のバランスにより決められていると考えられる.

収録刊行物

  • 日本老年医学会雑誌

    日本老年医学会雑誌 36(9), 613-619, 1999-09-25

    The Japan Geriatrics Society

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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    10008485398
  • NII書誌ID(NCID)
    AN00199010
  • 本文言語コード
    JPN
  • 資料種別
    REV
  • ISSN
    03009173
  • NDL 記事登録ID
    4892846
  • NDL 雑誌分類
    ZS21(科学技術--医学--内科学)
  • NDL 請求記号
    Z19-25
  • データ提供元
    CJP書誌  NDL  J-STAGE 
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