Hemodynamic Stresses and Blood Vessel

  • Ando Joji
    東京大学大学院・医学系研究科・医用生体工学講座

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Other Title
  • メカニカルストレスと血管
  • ロウネン イガク ノ テンボウ メカニカルストレス ト ケッカン

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Abstract

血管壁には常時, 血流に基づくシェアストレスや血圧による伸展張力などのメカニカルストレスが作用している. 血管壁の内皮細胞や平滑筋細胞はメカニカルストレスの変化を敏感に察知し細胞応答を起こす. 細胞の形態や機能が変化し, その際に, 関連する遺伝子の発現も変化する. こうした細胞応答は血管の新生や成長や再構築だけでなく, 組織の血液循環や体血圧の調節, さらには血液凝固・線溶現象や組織の免疫・炎症反応にも深く関わっている. 概して生理的なメカニカルストレスは血管拡張, 抗血栓, 抗粥状動脈硬化, 抗平滑筋増殖の方向に働くが, その強さや性質が過度に変化すると病因として働くことがある. 例えば, 適当な強さの層流性のシェアストレスが弱く乱流性になると粥状動脈硬化病変が起き易くなる条件が出来上がる. 近年, 培養血管細胞に流体力学的に設計された装置で定量的なメカニカルストレスを負荷する実験法が応用されて, その細胞作用が次第に明らかになってきた. シェアストレスが内皮細胞の血管拡張物質の産生を促し, 逆に血管収縮物質産生を抑制すること, トロンボモデュリンの発現を増加させて抗血栓活性を高めること, 接着分子の発現を修飾して白血球に対する接着性を変えること, あるいは増殖因子やサイトカインを放出することが判明した. また, シェアストレスが内皮遺伝子の発現を転写あるいは転写後レベルで調節すること, 転写調節ではシェアストレスで活性化される転写因子とそれが結合する遺伝子プロモーターのシェアストレス応答配列が重要な役割を果たしていることも明らかになった. シェアストレスの情報伝達に関してはまだ特異的なセンサー分子は発見されていないが, Ca2+, K+チャネル, G蛋白, 各種プロテインカイネース, インテグリンなど多くの因子が関与することが指摘されている. 現在, シェアストレスに特異的な情報伝達経路の解明が進行中である.

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