世界の人口戦略における公衆衛生的アプローチの有用性 公衆衛生活動を重視するフィリピン家族計画•母子保健プロジェクトの事例報告

  • 湯浅 資之
    国際協力事業団フィリピン家族計画・母子保健プロジェクト・フェーズ2
  • 三宅 邦明
    在フィリピン日本大使館
  • 中原 俊隆
    京都大学大学院医学研究科公衆衛生分野

書誌事項

タイトル別名
  • UTILITY OF THE PUBLIC HEALTH APPROACH FOR THE WORLD POPULATION STRATEGY
  • 公衆衛生活動報告 世界の人口戦略における公衆衛生的アプローチの有用性--公衆衛生活動を重視するフィリピン家族計画・母子保健プロジェクトの事例報告
  • コウシュウ エイセイ カツドウ ホウコク セカイ ノ ジンコウ センリャク ニ オケル コウシュウ エイセイテキ アプローチ ノ ユウヨウセイ コウシュウ エイセイ カツドウ オ ジュウシ スル フィリピン カゾク ケイカク ボシ ホケン プロジェクト ノ ジレイ ホウコク

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抄録

目的 世界のとりわけ開発途上国の人口増加は著しく,社会,経済,環境に大きな影響を与えつつある。人口増加率が2.0%と東南アジア諸国の内でも特に高率なフィリピンでは,人口増加は貧困と負の連鎖を形成し発展の大きな足かせになっていると指摘されており,人口問題の緩和は同国の優先的政治課題であった。そこでフィリピン政府は我が国に人口対策における技術協力を要請し,国際協力事業団(JICA)を介した支援が展開されることとなった。<br/>方法 人口政策における過去の経験則を集約したカイロの「国際人口開発会議(ICPD)行動計画」は,家族計画の半強制によるマクロ的人口抑制を主体とした方策から保健,教育,男女平等の社会的参画実現など社会開発を重視する戦略への転換を提唱した。JICA による技術協力はこの ICPD 行動計画に則り,母子保健や住民参加による地域保健活動など公衆衛生的アプローチに基づいて,フィリピンの人口対策を支援した。<br/>成果 JICA による「統合母子保健プログラム」は包括的な妊産婦・乳幼児健診を定着させ母子保健の向上に寄与した。また「リプロダクティブ・ヘルス推進プログラム」ではリプロダクティブ・ヘルスの理念を啓発普及した他,家族計画活動への男性の巻き込み,思春期保健活動などモデル事業の開発に貢献した。「地域住民組織支援プログラム」に分類される多様な地域保健活動支援により,住民自身による衛生・保健活動が活発化し自立した継続が図られた。<br/>結論 当事例は人口家族計画の政府開発援助の一環であるが,カトリック教会の影響が強いフィリピンの文化背景を考慮して避妊具の配布などの家族計画を一切支援せず,専ら公衆衛生的アプローチに基づく地域保健活動を支えてきた。こうした戦略は公衆衛生の有用性を確認した ICPD の理念に適っている。

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参考文献 (27)*注記

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