P450と発がん P450 and carcinogenesis

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抄録

ヒトのがんの大部分は環境中に存在する化学物質にその原因があると考えられるようになった.発がん物質の多くは不活性な物質であり,生体内で代謝的に活性化されてその作用を発揮することが知られている.しかし,代謝過程で不安定な中間代謝物の生成が見られ,これらの活性中間体がDNA等を攻撃することにより発がん性を示すことが観察されている.この反応に関与する薬物代謝酵素の中にチトクロムP450(総称をP450,各分子種をCYP)と呼ばれる一群の酵素がある.化学物質の発がん性と関係の深い変異原性を調べるバクテリア試験菌株に,ヒトP450を導入することで,実験動物ではなく,ヒトにおける代謝を調べると同時に,反応性に富む代謝中間体のDNA損傷性を高感度に検出できる系が樹立されている.動物のin vivoにおけるがん原性の作用発現におけるP450の役割を明らかにする目的で,CYP1A2,CYP1B1およびCYP2E1遺伝子のノックアウトマウスが作出された.これらのノックアウトマウスにおいては,典型的な発がん性物質を投与してもその発がん性が極めて劇的に低減することから,哺乳動物種におけるP450の役割がin vivoにおいて明らかとなった.ヒトのP450を実験動物に発現させた世界最初の例はヒト胎児に特異的に発現しているCYP3A7である.ヒト胎児に特異的に発現するP450であるCYP3A7を導入したトランスジェニックマウスは,ヒトの胎児に対する発がん性物質などの毒性の一部を推測するための強力な遺伝子改変動物となることが期待された.肝外臓器において,遺伝子改変の結果発現したCYP3A7は発がん性アフラトキシンを代謝的に活性化した.しかし,肝においては,マウス固有のCYP3A酵素の影響を受け,その役割は必ずしも明らかにすることはできなかった.P450の比較的ゆるやかな基質特異性を考慮し,宿主の対応するP450をノックアウトして,ヒトP450遺伝子を導入すると,優れたヒト型の遺伝子改変動物を用いた薬理学的研究のツールとなるであろう.<br>

Multiple forms of cytochrome P450 play important roles in metabolic activation of a variety of environmental procarcinogens. Large species differences in substrate specificities between experimental animals and humans are critical factors in evaluation of chemical safety. To study the role of human P450s in genotoxic activation of environmental chemicals, transgenic bacteria expressing both human P450s and P450 reductase have been developed for the mutagenicity test. Mice lacking CYP1A2, and CYP1B1, and CYP2E1 were prepared to investigate the mechanism of procarcinogen activation in vivo. The first human transgenic animals were mice carrying human fetus-specific CYP3A7. Using these transgenic mice, mutagenic activation of a natural mycotoxin, aflatoxin B<sub>1</sub>, catalyzed by CYP3A7 in vivo was demonstrated. This observation was clear in extrahepatic tissues that did not express mouse CYP3A enzymes. In conclusion, P450s are key factors involved in metabolic activation of environmental procarcinogens for their biological actions.<br>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 119(4), 208-212, 2002-04-01

    公益社団法人 日本薬理学会

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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    10008991820
  • NII書誌ID(NCID)
    AN00198335
  • 本文言語コード
    JPN
  • 資料種別
    REV
  • ISSN
    00155691
  • NDL 記事登録ID
    6120727
  • NDL 雑誌分類
    ZS51(科学技術--薬学)
  • NDL 請求記号
    Z19-247
  • データ提供元
    CJP書誌  NDL  J-STAGE 
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