下部尿路機能研究の最近の進歩:基礎研究を臨床応用に繋ぐ  5  下部尿路機能の分子生物学的研究

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タイトル別名
  • Molecular biological researches of the lower urinary tract function
  • 下部尿路機能の分子生物学的研究
  • カブ ニョウロ キノウ ノ ブンシ セイブツガクテキ ケンキュウ

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抄録

排尿に関する情報伝達系のなかで,交感神経系の支配する臓器にはα1受容体またはβ受容体が分布している.α1受容体は尿道平滑筋,前立腺に密に分布しており,蓄尿期にはこれらの平滑筋を収縮させる.そのサブタイプのなかではα1A受容体が主たる作用を有し,α1a受容体遺伝子の発現が最も多いことが確認されている.ヒト膀胱平滑筋組織中にはβ3受容体遺伝子が強く発現し,薬理学的にもβ3受容体を介した弛緩が主体であり,ヒト膀胱平滑筋の弛緩はβ3受容体を介したものが中心と考えられている.尿意を伝達しやすい閾値の低い求心性神経が,切迫性尿失禁で重要な役割を果たしているが,こうした神経に存在すると考えられていたバニロイド受容体の遺伝子がクローニングされ,熱とpHに感受性のあるイオンチャネル(VR1,VRL1)であることが判明した.また,プリン受容体のなかでイオンチャネル型のP2X3も求心性神経に存在し,尿意の伝達に関与することが判明した.近い将来,交感神経系β3受容体活性薬,VR1,VRL1,P2X3などの選択的阻害薬が,頻尿,切迫性尿失禁治療薬となる可能性が高い.<br>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 121 (5), 325-330, 2003

    公益社団法人 日本薬理学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (21)*注記

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