ヒト胃癌原発巣の細胞増殖性が肝転移成立に及ぼす影響についての免疫組織化学的研究

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抄録

胃癌原発巣の細胞増殖性が, 肝転移を起こすことにどのように関与しているのかを知ることを目的とした。対象は腹膜転移のない進行胃癌45例。これらを手術時にすでに肝転移のみられた10例 (A群), 手術後6カ月以上経てから肝転移再発のみられた18例 (B群), 術後2年以上肝転移再発のみられなかった17例 (C群) の3群に分け, 細胞増殖性を比較検討した。細胞増殖性は増殖活性の指標とされる増殖期関連抗原PCNA, 変異することで悪性度の指標とされる癌抑制遺伝子p53, そして細胞消失により異常増殖を抑制するとされるアポトーシスのそれぞれに対する免疫組織化学的染色の発現の有無から検討した。その結果, PCNAの発現頻度はA群6例 (60.0%), B群11例 (61.1%), C群9例 (52.9%), 変異p53の発現頻度はA群8例 (80.0%), B群9例 (50.0%), C群8例 (47.1%), そしてアポトーシスの発現頻度はA群4例 (40.0%), B群8例 (44.4%), C群12例 (70.6%) であった。PCNA, 変異p53, アポトーシスの発現頻度のいずれにも3群間に有意差はみられなかった。しかし, PCNA発現陽性であった26例 (57.8%) についての検討では, 変異p53の発現頻度はA群6例 (100.0%), B群4例 (36.4%), C群4例 (44.4%), そしてアポトーシスの発現頻度はA群1例 (16.7%), B群3例 (27.3%), C群5例 (55.6%) であった。手術時に肝転移のみられたA群において, p53の変異が有意に多かった (p<0.05) 。また, 手術時に肝転移のみられたA群は, 有意差は認めないものの, アポトーシスの発現が肝転移再発のないC群に比べ少ない傾向であった (p<0.1) 。

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