自然消退した肝の炎症性偽腫ようの1例

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タイトル別名
  • A case of inflammatory pseudotumor of the liver with spontaneous regression

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抄録

症例は30歳男性, 自衛官. 平成14年7月3日より一過性の発熱と持続性の右側腹部痛を認め, 近医にて腹部単純CTにて肝占拠性病変を指摘され, 精査のため同年7月24日に当科入院となった. 入院時には無症状で, 血液データではALT値の軽度上昇を認めるのみであり, 炎症反応, 肝炎ウイルスマーカー, 腫瘍マーカーは全て陰性であった. 腹部超音波検査, 腹部 dynamic CT検査では肝S8に3cm大の腫瘤を認めた. 画像にて確定診断困難なため, 超音波下腫瘍生検を施行したところ, 肝実質細胞はほとんど認められず, 形質細胞とリンパ球浸潤を伴う瘢痕組織像を示し, 肝の炎症性偽腫瘍と診断した. 未治療にて経過観察を行ったところ, 3カ月後にはALT値は正常化し, 腹部 dynamic CT検査上, 腫瘤陰影はほぼ消失した. 炎症性偽腫瘍は外科的切除後に確定診断される場合が多く, その自然消退を観察し得た報告例は少ないが, 肝占拠性病変の鑑別診断に, 本症を念頭に置くことが肝要であると思われた.

収録刊行物

  • 肝臓

    肝臓 45 (2), 121-124, 2004

    一般社団法人 日本肝臓学会

被引用文献 (5)*注記

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参考文献 (9)*注記

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