拡散係数の確率変動を考慮したトウモロコシの花粉拡散距離の推定

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  • Dispersal distance of corn pollen under fluctuating diffusion coefficient

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抄録

拡散方程式から導かれるブラウン運動モデルは生物拡散や経済変動を予測する上での基本となってきたものである。しかし,近年では,このブラウン運動モデルでは現実の生物拡散や経済変動をうまく表現することができないことが知られてきている。この問題を解決するために今までにいくつかの工夫がなされてきた。生物拡散の分野では(1)生物個体群が拡散係数の異なる二つの群の混合であると仮定する(2)生物の各個体の拡散時間が確率分布にしたがうと仮定する,などのアプローチが採用されてきた。しかし,これらの方法においてもその仮定の一般性や妥当性については問題を残したままである。<br><br>ブラウン運動モデルでは生物の移動方向がランダムであると仮定されている。しかし,移動の際の「一歩の大きさ」については常に一定であると暗黙に仮定されている。そういう意味では,ブラウン運動モデルは「完全にランダムな動き」を表現しているとはいえない。現実には,環境にはさまざまな「揺らぎ」がある。その揺らぎのために「一歩の大きさ」もランダムに変動するはずである。そこで,今回のモデルでは,「一歩の大きさ」が確率的に変動し,その確率分布が一般化ガンマ分布で近似的に表現できると仮定した。この場合の拡散方程式は通常の方法では解けないが,時間を相対化して「拡散係数で重みづけた時間」なる概念を導入すると明示的な解を得ることができる。この解は移動時間がガンマ分布に従う場合の拡散方程式の解と一致することが示された。近年の数理ファイナンスの分野では,レヴィ過程の一種として「VGモデル」などが半経験的に使用されてきているが,今回得られた解の一次元版はこのVGモデルと一致する。したがって,このモデルはVGモデルの使用に対する一つの根拠も与えている。<br><br>生物拡散は,近年ではナタネやトウモロコシなどの遺伝子組み換え作物の花粉拡散の観点から特に多く議論されている。そこで,過去に報告されてきたトウモロコシの花粉拡散データのいくつかにモデルを適用してみた。<br>

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