PACAP遺伝子の神経特異的発現調節機序

  • 宮田 篤郎
    鹿児島大学大学院医歯学総合研究科生体情報薬理学
  • 菅原 英輝
    鹿児島大学大学院医歯学総合研究科生体情報薬理学
  • 岩田 真一
    鹿児島大学大学院医歯学総合研究科生体情報薬理学
  • 清水 隆雄
    鹿児島大学大学院医歯学総合研究科生体情報薬理学
  • 寒川 賢治
    国立循環器病センター研究所生化学部

書誌事項

タイトル別名
  • The regulatory mechanism for neuron specific expression of PACAP gene.
  • PACAP イデンシ ノ シンケイ トクイテキ ハツゲン チョウセツ キジョ

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抄録

多機能神経ペプチドPACAPは,主に中枢神経系に分布し,ニューロトランスミッター,ニューロモデュレーターとしての機能の他,神経栄養因子としての作用が注目されている.PACAP遺伝子の発現調節の解析において,我々は,神経選択的サイレンサー(NRSE)に相同性の高い抑制的エレメント(NRSLE1,NRSLE2)が存在することを見出した.これらのエレメントは,ヒト,ラット,マウスの3種類の動物種において,翻訳開始点からの距離および塩基配列の相同性の点でよく保存されていた.NRSEは神経特異的転写制御の中核を担う転写抑制エレメントとして知られており,神経特異的遺伝子の近傍に存在し,それらの発現制御に関与したり,神経細胞の最終分化に関与するなど重要な転写要素として考えられている.NRSEは,21 bpのエレメントであり,NRS因子(NRSF)が結合することにより神経特異的遺伝子の発現を神経以外の細胞で抑制する.神経細胞では,NRSFのバリアントであるNRnVが発現することにより,ドミナントネガティブ的にNRSFの機能が阻害されることが知られている.3T3細胞核抽出物のゲルシフトアッセイにより,NRSLE1およびNRSLE2が,Naチャネル2型遺伝子のNRSEと共通の核タンパクと結合することが示唆された.また,ルシフェラーゼレポーターアッセイによりSV40プロモーターに及ぼす効果を検討したところ,PC12細胞では抑制効果は見られなかったが,3T3細胞ではルシフェラーゼ活性を抑制した.また,RT-PCR解析により,PC12細胞では,PACAPと共にNRnVの発現が観察されたのに対して,非神経細胞である3T3細胞やC6細胞では発現していなかった.因みにNRSFは,いずれにおいても発現が見られた.これらのことから,PACAPの神経特異的発現調節に,神経選択的サイレンサーが関与することが示唆された.<br>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 123 (4), 235-242, 2004

    公益社団法人 日本薬理学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (46)*注記

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