血管内皮細胞におけるATP放出経路

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タイトル別名
  • ATP release pathways in vascular endothelial cells
  • ケッカン ナイヒ サイボウ ニ オケル ATP ホウシュツ ケイロ

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抄録

血管内皮細胞は様々な生理活性物質を分泌して血管の緊張や増殖の調節に関わり,その機能は血中の液性因子や血球との接触,さらに血流や血圧で加わる機械的な刺激によってもたらされる.これらの調節機構のひとつとして,機械刺激によって内皮からATPが放出され,オートクリン/パラクリン的に自身あるいは周囲の細胞に作用して一酸化窒素の産生などをもたらす反応が知られている.ATPの放出は血管内皮細胞以外にも種々の上皮系および非上皮系細胞で観察されているが,このメカニズムにはなお不明な点が多い.特に,どのような経路を通ってATPが放出されるのかについては未だ結論が得られていない.トランスポーターによる能動輸送,ATP含有小胞の開口放出,陰性荷電物質としてのATPが透過しうる陰イオンチャネルを介した放出などが可能性として示されているが,これらのうち血管内皮細胞で報告されているのは,開口放出と容積感受性陰イオンチャネル(以下VRAC)およびコネキシンを通した放出である.我々はウシ大動脈内皮細胞を用い,VRAC阻害薬によるVRAC電流とATP放出の抑制の濃度反応関係が一致していることを観察した.また,低濃度の細胞外ATPによってVRAC電流が電位依存性に抑制され,この現象がKd(0)1.0 mM,チャネル結合部位の電気的距離0.41とした透過型阻害薬モデルで説明できることを明らかにした.すなわち,この細胞での低浸透圧刺激によるATP放出はVRACを介するものと考えられた.血管内皮細胞の種々の生理機能に及ぼすATP放出の役割の解明とATP放出経路の修飾による内皮機能調節の可能性に向けて,今後の検討が期待される.<br>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 123 (6), 403-411, 2004

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (46)*注記

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