大腸癌診療における画像診断の進歩:MDCT,MRI,PET

  • 村上 卓道
    大阪大学大学院医学系研究科医用制御工学講座

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抄録

大腸癌診療の画像診断においては,原発巣の描出,進達度診断と共に,転移巣の発見および鑑別診断が重要になってくる.原発巣の描出には一般的にはバリウム注腸造影や大腸ファイバーが行われており,その精度と有用性は疑うべくもない.しかしこれらの検査は,腫瘍の形態や壁の硬さなどの様子を内腔より観察するものであり,壁内外や他臓器への進展度(T分類),リンパ節転移(N分類),遠隔転移(M分類)を評価することはできない.<BR>近年,CTやMRIでは高速撮像法が飛躍的に進歩し,時間,空間分解能の高い画像が撮れるようになった.特に,近年臨床応用可能となったマルチスライスCTでは,従来のヘリカルCTに比して10倍以上の高速撮像が可能であり,広い範囲を薄いスライス厚で撮像できるようになった.この画像から,描出に関しては腸管内腔からの3次元画像である仮想内視鏡像を作成することができる.また,腫瘍と接する壁に垂直な画像を再構成することもできるため,腫瘍の壁浸潤も評価できる.更に,広い範囲のリンパ節,遠隔転移の評価も可能である.このように,腫瘍のみならず転移巣も詳細に評価することができる.一方,MRIはマルチスライス CT程の空間分解能はないが,そのコントラスト分解能の高さから腫瘍の壁内浸潤を評価しやすい.広い範囲の代謝の更新した部分を描出できるPETは,原発巣の描出にも有用とされているが,現在は主に局所再発の有無やリンパ節転移,遠隔転移の有無の評価に用いられている.前述のMDCTとの融合像(CT-PET像)を用いれば,更に描出能の向上が期待できる.<BR>大腸がんの転移しやすい臓器としては,門脈血流の帰る肝臓が第一に挙げられる.肝転移は,手術や動注化学療法など比較的治療できる可能性が高い部位であり,またその有無は原発巣の手術の適応にもかかわってくるため,その評価は非常に重要である.従来は,動脈性門脈造影下CT(CTAP)がもっとも描出能が高く有用とされていたが,その侵襲性の高さや高額な検査費用が問題であった.最近は肝臓の網内系に選択的に取り込まれる超常磁性体酸化鉄粒子(Superparamagnetic iron oxide,SPIO)を用いた造影MRIがCTAPに劣らない診断能があるとされている.<BR>MDCT,MRI,PETをうまく組み合わせることにより,腫瘍のみならず転移巣も詳細に,低侵襲に評価することができる.

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