備中国分寺和釘の酸化皮膜の調査

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タイトル別名
  • Investigation of Oxide Film Grown over Japanese Nail Used at Bicchu-kokubun-ji Temple
  • ビッチュウ コクブンジ ワクギ ノ サンカ ヒマク ノ チョウサ

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抄録

古代の釘がなぜ長く朽ちることなく使用できるかの疑問に対して,素材の介在物量と素材を包み込む酸化皮膜の構造に着目した。その結果,素材には鉄澤が残存する必要があり,特にP濃度で0.1%オーダーのケイ酸系ガラス質が存在することが重要であることを確認した。また電子線回折による構造解析の結果,津を含む和釘に生成する皮膜には結晶子サイズ10nm程度の微細な多結晶FeOが存在し,しかも界面側および最表層側の2層構造となっていることを確認した。さらにこの皮膜は通常の熱間圧延で生成する単結晶FeOとは異なり密着性が良好であり,保護皮膜としての効果が期待されるものであった。<BR>滓を適量含む古代の釘の製造工程での鍛錬でのたたき出し作業は,フェライト中に,澤のガラス質分を微細に均一に分散させて鋼自体の耐食性を向上させるばかりでなく,素地との密着性の良好な微細な保護皮膜を形成させる効果があると推定した。しかしこの効果は適量の滓が存在して初めて発揮されるものであり,鋼を何度も再利川するに従い失われるものではないかと思われた。<BR>今後は,滓を適量含む和鉄において,鍛錬工程で生成する皮膜の結晶子サイズの変化についてさらに調査を進めていきたいと考える。<BR>またこのような古代の釘を調査される場合,酸化皮膜の結晶子サイズにも関心を持って調査していただけることを期待する。

収録刊行物

  • 鉄と鋼

    鉄と鋼 91 (1), 91-96, 2005

    一般社団法人 日本鉄鋼協会

被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (9)*注記

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