非外科的歯周治療後に包括的こう合再構築を行った重度成人性歯周炎の一例

  • 八巻 恵子
    東北大学大学院歯学研究科 口腔生物学講座歯内歯周治療学分野
  • 川村 仁
    東北大学大学院歯学研究科 口腔病態外科学講座顎顔面外科学分野
  • 依田 正信
    東北大学大学院歯学研究科 口腔修復学講座咬合機能再建学分野
  • 菅原 準二
    東北大学大学院歯学研究科 口腔保健発育学講座顎口腔矯正学分野
  • 島内 英俊
    東北大学大学院歯学研究科 口腔生物学講座歯内歯周治療学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Nonsurgical Periodontal Management of Severe Adult Periodontitis Followed by Interdisciplinary Dentofacial Therapy: A Case Report

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抄録

歯周治療はスケーリングとルートプレーニングによる消炎が基本である。しかし進行した歯周炎症例における治療目標は, 長期間安定して維持できる歯列, すなわち機能的で手入れしやすく, 咬合性外傷を生じない歯列を構築することである。近年, 崩壊著しい歯列を治療する機会が飛躍的に増え, 複数科で高度に専門的な対応が必須になってきた。本報は, 重度歯周炎を併発したII級の骨格性不正咬合の症例報告である。患者は40歳の女性で, 下顎が小さく後退しているのに加え上顎切歯が唇側傾斜·離開したため, 鳥貌を呈し, バイトが深くオーバージェットも過大であった。口唇閉鎖不全と, 両側顎関節のクリッキングも認められた。歯周ポケットは最深部で5mmとそれほど深くはなかったが, 歯槽骨吸収がかなり進行していることがX線写真から明らかとなった。不正咬合の是正には外科矯正が必要だったので, 複数領域に及ぶ治療を提供できるようにチームを編成した。最初の8カ月間は歯周治療—口腔清掃指導および丹念なルートプレーニング—を実施し, 並行して歯内治療と暫間修復を施した。患者は動機づけが強く, 治療に対する組織応答も良好であった。次の2年間は矯正治療に費やした。マルチブラケット装置を利用しながら, 上顎はLe Fort Iで骨切りして咬合平面の傾斜を是正し, 下顎は仮骨延長法により前後径を増大させた。動的治療期間中, 歯の動揺と軽度歯肉炎を生じたので, 保定を開始するとすぐに, 刷掃指導と全顎の再ルートプレーニングを実施した。プロビジョナルもこの修正期間中に装着した。歯周組織が健康を回復し, 新しい顎位が問題なく機能するのを確かめてから, 注意深く設計した最終補綴物を装着した。審美的, 機能的に治療は成功したが, 支台歯の多くは支持歯槽骨が少ないので, 良好な口腔清掃状態を維持し咬合性外傷を回避するために, リコールは欠かせない。

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参考文献 (15)*注記

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