水痘ワクチン定期接種化の費用対効果分析

書誌事項

タイトル別名
  • Cost-Effectiveness Analysis of Routine Immunization for Varicella in Japan
  • スイトウ ワクチン テイキ セッシュカ ノ ヒヨウ タイ コウカ ブンセキ

この論文をさがす

抄録

目的: 水痘の予防接種は現在任意接種であるが, 定期接種化された場合の費用対効果分析を行った.<BR>方法: 調査は2004年6月15日から1年間, ある地方都市 (人口8万人) の小児科を標榜するほぼ全てに相当する11医療機関において実施した. 調査は家族票と医師票からなり, 家族票では家族の休業日数等を, 医師票では医療費等を尋ねた. 全ての調査は, 患者名, 医療機関名も無記名とし, 患者には初診時に主治医から口頭で調査の概要が説明され, 協力が要請された. 患者がその場で断った場合には医師票も残さない. 家族票は回復後の記入, 送付なので, 調査協力は家族の自由意思に基づいている. 家族が患者を看護するために日常生活を中断すると, その際の機会費用を人的資本アプローチに基づいて算出した. 賃金は, 2002年度賃金構造基本調査から推定した. 後遺症例は1QALYあたりの金銭評価を600万円として評価した. 患者数は, 出生コーホートの内, 予防接種を受けなかった7割の人口に相当する84万人とした. 評価基準は社会を評価者とする増分便益費用比を用いた.<BR>結果: 回収は医師票402, 家族票265枚であった. 日本全体の疾病負担は約522億円であるが, そのうち機会費用が約8割を占めた. 増分便益費用比は, 接種費用を5,000円から12,000円とした場合, 平均的にはいずれの場合でも4以上と非常に高い数値を示していた. また, 最小値を見ても1.5以上と1を上回っていた.<BR>考察: 水痘の疾病負担は2000年時点の患者数20万人での麻疹の疾病負担よりも大きかった. 増分便益費用比が, その最小値においても1を上回っておりほぼ確実に, 定期接種化によってもたされる追加的な便益が, 追加的な費用を上回っていた. したがって, 定期接種化に向けて強い政策的根拠が確認された.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 80 (3), 212-219, 2006

    一般社団法人 日本感染症学会

被引用文献 (10)*注記

もっと見る

参考文献 (17)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ