-
- 市原 和夫
- 北海道薬科大学薬学部薬学科 薬理学分野
書誌事項
- タイトル別名
-
- Myocardial dysfunction
- シンキノウ ショウガイ
この論文をさがす
抄録
高脂血症・高コレステロール血症治療薬として広範に使用されるHMG-CoA還元酵素阻害薬であるスタチンは多くの場合,動脈硬化を未然に防いで冠動脈疾患,心血管疾患を予防しようという目的で患者に投与される.スタチンを使用すると血中コレステロールが低下し,確かに動脈硬化が改善される.しかし,筆者の動物実験および主に欧米で実施された数多くの長期臨床試験の結果は,全てのスタチンが動脈硬化改善に見合う心疾患予防効果を発揮するわけではないということを明白に示している.細胞膜透過性の低い水溶性スタチンは,コレステロール低下に伴う冠疾患予防効果が認められるのに対して,細胞膜透過性の高い脂溶性スタチンはその限りではない.不幸なことに,臨床で使用されるのは,その種類も量も,圧倒的に脂溶性スタチンが多い.脂溶性スタチンも,肝臓のHMG-CoA還元酵素を阻害して血中コレステロールを下げ,動脈硬化を改善して心疾患予防に寄与する.一方,脂溶性スタチンは心臓の同じ酵素を阻害して,心疾患に好ましくない別の作用をする.両作用が合わさってしまうと,この薬物の心疾患予防効果が激減し,期待する心疾患予防が殆ど得られない.筆者でも,これを「副作用」と呼ぶのには躊躇する.しかし,「悪いことはないからいいじゃない」と看過すると,2001年のセリバスタチンのような事故が起こってしまう.ここでは「副作用の作用機序」という特集の中で,「心機能障害」を分担することになっている.本来,多数の薬物,薬剤を挙げ,それらの心臓機能に対する副作用機序を列挙すべきであるが,スタチンを例にして「副作用」に対する筆者の少し偏った考えを述べる.<br>
収録刊行物
-
- 日本薬理学雑誌
-
日本薬理学雑誌 127 (6), 441-446, 2006
公益社団法人 日本薬理学会
- Tweet
キーワード
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001204271078656
-
- NII論文ID
- 10018061158
-
- NII書誌ID
- AN00198335
-
- ISSN
- 13478397
- 00155691
-
- NDL書誌ID
- 7977006
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- NDL
- Crossref
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可