ウイルスと発癌  3.ヒトパピローマウイルスと子宮頸癌

  • 神田 忠仁
    国立感染症研究所・病原体ゲノム解析研究センター
  • 柊元 巌
    国立感染症研究所・病原体ゲノム解析研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Human Papillomavirus and Cervical Cancer
  • ヒトパピローマウイルスと子宮頸癌
  • ヒトパピローマウイルス ト シキュウケイガン

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抄録

HPVは8000塩基対の環状2本鎖DNAをゲノムとする小型のウイルスで,エンヴェロープは無い.表皮基底細胞に侵入し,核内エピゾームとして潜伏持続感染する.感染細胞が表皮形成の分化を始めると,HPVゲノムの複製に利用するため,E6蛋白質がp53を分解し,E7蛋白質がpRbの機能を阻害して細胞のDNA合成系を再活性化する.通常ウイルス増殖後に感染細胞は死滅する.ごく稀に細胞DNAにE6,E7遺伝子が組み込まれ,ウイルス増殖ができないにもかかわらずE6及びE7蛋白質が継続的に高発現することがある.このような細胞は不死化し,さらに変異が蓄積して癌化する.100以上の遺伝子型のうち,このような機構で子宮頚癌に関わるものは16型や18型等の13の型(高リスク型)である.主要キャプシド蛋白質のみを細胞で高発現させると,自律的に集合してウイルス様粒子ができる.6,11,16,18型のウイルス様粒子を抗原とするワクチンの臨床試験が行われ,これまでの成績は型特異的な感染予防効果を示している.

収録刊行物

  • ウイルス

    ウイルス 56 (2), 219-230, 2006

    日本ウイルス学会

被引用文献 (6)*注記

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参考文献 (108)*注記

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