反響反復書字を呈した脳血管障害の1例

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  • A case of echopaligraphia following cerebrovascular disease

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抄録

右中大脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血後に,聴覚性および視覚性の反響書字 (echographia) と反復書字 (paligraphia) が融合して出現し,反響反復書字 (echopaligraphia) を呈した 1 例を報告した。症例は 46 歳,右利き男性。本例では反響反復書字に加え,右手の把握現象や道具の使用行為,常同行為,変形過多などの精神神経症状が認められた。頭部 X 線 CT (第 43 病日) の所見として,クリップのアーチファクト以外に,第三脳室と両側側脳室の拡大,および右前頭葉 (右側頭葉前部の一部を含む) に低吸収域が認められた。本例の反響反復書字の特徴は以下のとおりであった。 (1) 水頭症による意識障害の増悪が観察される経過において,一過性に反響反復書字が観察され,出現状況が変化した。 (2) 一般に反響言語では完全型,減弱型,部分型などの反響形式がみられるとされるが (波多野ら1987) ,本例の反響書字では,反響言語に類似した反響形式が観察された。 (3) 本例の反響書字は,完全型・減弱型 → 完全型・減弱型・不定形型 → 不定形型・部分型という反響形式の変化を示した。 (4) 本例の反復書字は,形式としては文字の一部の繰り返しであった。量的には,最初は軽微な反復のみが観察されたが,後に多量の反復へと変化し,その後さらに反復回数が減少するという経過をたどった。本例で観察された反響反復書字の症候学的特徴を検討し,出現様相および機序について考察した。

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