リハビリ室における学習活動の試行について

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【目的】国立駿河療養所は全国に13ある国立ハンセン病療養所の一つであり、入所者の平均年齢は77歳を超えている。リハビリ室の役割は機能回復訓練ばかりでなく、機能維持も重要視されている。近年、音読や計算といった学習が、大脳、特に前頭前野を活性化するとして、注目されている。そこで、リハビリ室に毎日来られている入所者に協力していただき、試行的に学習活動を行い、その効果について検討したので報告する。 【方法】対象者8名(女性7名、男性1名、74歳~87歳、平均年齢81.9歳)に、毎日50問、週5~6日、市販の「脳を鍛える大人の計算ドリル」を行ってもらい、計算に要した時間と得点を記録した。視力に問題がある1名は、拡大文字にて、毎日20問の計算ドリルで実施した。開始時及び3ヵ月後に、認知機能テスト(FAB:前頭葉機能検査、MMSE:認知症スクリーニングテスト)を行った。統計的処理は、ノンパラメトリック検定、平均値の差の検定を用いた。この研究に関し、参加者に目的を説明し同意を得た。 【結果】ドリルの得点は50点満点に対して、開始1週間の平均は48.3点、3ヶ月後の平均は49.1点で、1%有意水準で有意に改善した。計算に要した時間も、開始1週間の平均所要時間は4分32秒、3ヶ月後の平均所要時間は3分47秒で、1%有意水準で有意に短縮した。認知機能テストのうち、FAB(18点満点)は、開始時平均13.6点、3ヵ月後の平均14.8点、点数は上がったものの統計的な有意さはなかった。一方、MMSE(30点満点)は、開始時平均25.0点、3ヶ月後の平均26.9点、5%有意水準で有意に改善した。 【考察】学習療法とは音読や計算といった学習をインストラクターと一緒に1日15分程度行い、認知機能やADLの改善を図る治療法と定義されている。今回の試行では、リハビリ室というオープンな場所の関係上、音読ではなく、計算を行うことにした。また、採点なども含め15分程度となっていますが、今回はそれよりも短い一人8分程度とした。それにもかかわらず、認知機能は、改善傾向を示し、特にMMSEでは統計的に有意に改善した。川島は、学習療法によって、認知機能の改善を報告している。今回の試行においても、同様の結果が得られた。このことから、毎日継続して行うことで、学習の効果があったものと思われる。 【まとめ】今回の試行では、ADLが自立している対象者を中心に行った。今後は、当療養所で比較的多い視力に問題がある人、認知症またはその疑いのある人などの参加方法について検討していきたい。

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