遷延性の低血圧を伴った頭部外傷後下垂体前葉機能不全の1例

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  • A Case of Anterior Pituitary Dysfunction Following Traumatic Brain Injury

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抄録

遷延する低血圧を症状とした頭部外傷後下垂体機能不全の1例を報告する。患者は64歳の男性, 自宅にて転倒後, 意識障害を伴って救急搬入された。来院時深昏睡かつ呼吸微弱であり気管挿管後に脳CTを施行, 急性硬膜下血腫を診断した。開頭血腫除去術後CTにて下垂体近傍に広範な低吸収域を認め, 同時に昇圧剤不応性の遷延した低血圧を伴ったため外傷後下垂体機能不全による二次性副腎機能不全を疑った。下垂体ホルモン値は, 性ホルモンを除く全種ホルモン分泌異常を認めた。ステロイド投与後血圧は極めて安定化し, 以後低体温療法とホルモン補充療法を行い救命し得た。頭部外傷後の下垂体機能不全については近年, 全世界において多くの報告がなされているが, 頭部外傷後下垂体機能不全の発生を検知するには, 正確な診断と長期の経過観察が必要とされる。頭部外傷の診療に携わる医療者にとって, 本疾患の概念を認識しておき, 早急に下垂体機能不全の診断を行い, 適切なホルモン補充療法を開始することが患者の予後や生活の質を高める上において非常に重要である。

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