He‐Ne低レベルレーザー光による鎮痛に関する基礎研究

  • 河野 透
    旭川医科大学外科学講座 消化器病態外科学分野
  • 葛西 眞一
    旭川医科大学外科学講座 消化器病態外科学分野

書誌事項

タイトル別名
  • The Mechanism of the He-Ne Low Level Laser Irradiation for Pain

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抄録

He-Ne 低レベルレーザー(Low Level Laser,LLL)による鎮痛効果に関する機序について,現在までに明らかにしえた基礎的研究成果を報告する.いずれの実験も,MERA He-Ne COLD LASER PDT(波長632.8nm)を使用した.除痛効果に関して,(1)ネコの感覚神経を介した痛み刺激入力と痛みを中枢に伝達する脊髄後角の神経細胞活動を反映する脊髄後根電位の,LLL照射前後での変化を解析した結果,脊髄後根電位の照射前値を100%とすると,10分間LLL照射終了直前には66%にまで抑制された.(2)ウサギの末梢感覚神経にLLL照射し,痛み刺激入力成分を抑制するか否かについて解析した結果,末梢神経の20pulses/sec前後の神経活動が,痛み刺激直後には20倍近くに上昇し,痛み刺激中は5倍前後の値を維持した.LLL照射により痛み刺激直後のピーク値およびその後の経過において神経活動は抑制された.(3)ラットの黒質を含む脳切片を作成.脳スライス法を用い神経細胞内電位の変動を解析した.顕微鏡下に細胞内電位記録電極で,黒質ドパミン細胞を同定保持し細胞内電気活動を経時的に記録.LLL照射前後による変化を観察した結果,黒質のドパミン細胞の自発発射頻度は減少した.LLLが末梢感覚神経を介する痛み刺激入力成分を抑制する可能性を強く支持し,鎮痛効果の発現機序として,痛み感覚神経のNerve conduction blockerとしての役割が示唆された.さらに,神経細胞のthreshold 付近の膜電位における Persistent Na 電流が抑制され,神経の自発発射活動が減少したことが示唆され,末梢神経だけでなく,中枢神経疾患に対してLLLが新しい医療技術を提供できる可能性がある.

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参考文献 (33)*注記

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