維持血液透析時に認められる過剰な血圧低下の出現機序に関する検討

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タイトル別名
  • Analysis of the mechanisms underlying excessive decrease in blood pressure during maintenance hemodialysis
  • イジ ケツエキ トウセキジ ニ ミトメラレル カジョウナ ケツアツ テイカ ノ シュツゲン キジョ ニ カンスル ケントウ

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抄録

維持血液透析 (HD) 中に生じる血圧低下の原因として, 自律神経障害による血管収縮能の低下が関与することが知られているが, HD中の血圧低下の発生機序を詳細に検討し自律神経障害との関係について言及した報告は極めて少ない. 本研究は, 最大エントロピー法を用いてHD中の心拍変動を解析し, HD患者における透析時低血圧の発生機序について検討した. 日中にHD治療を受けている慢性腎不全患者56例を対象とし, HD中の血圧変化によって2群に分類した. すなわち, HD開始時の収縮期血圧と比較して, HD中の収縮期血圧の低下が30mmHg未満の患者を血圧不変群, 収縮期血圧が30mmHg以上低下した患者を血圧低下群とした. HD中は30分毎に血圧と心拍数を測定し, 患者背景因子として年齢, 性別, BMI, 糖尿病合併の有無, dry weight, 左室駆出率, BNPを調査した. 除水量はHD前後の体重変化をHD後の体重で除した除水率で評価した. 動脈硬化度の指標として, HD開始前に動脈波伝播速度 (PWV) を測定し, 身体活動量は国際標準化身体活動量質問表 (IPAQ) を使用して1週間の消費エネルギーを推定した. 自律神経活動の評価は, HD開始前にHolter24時間心電図を装着し最大エントロピー法にて心電図RR間隔の心拍変動解析を行い, 高周波成分 (HF) を副交感神経活動, 低周波成分 (LF) とHFとの比 (LF/HF) を自律神経活動のバランス, エントロピーを心拍変動の乱雑性の指標とした. 患者背景因子は両群間で有意差を認めず, 血圧低下群は, 血圧不変群と比較してPWVが有意に高値を (p<0.05), 1週間の身体活動量は有意に低値を示した (p<0.01). 血圧不変群はHD中にHF, LF/HF, エントロピーが有意に増加したが (それぞれp<0.01, p<0.01, p<0.05), 血圧低下群はHD中にHF, LF/HFは有意な変化を示さず, エントロピーは有意に低下した (p<0.05). HD中の血圧低下の出現機序として, 動脈硬化性病変の進行に起因する末梢血管の収縮・拡張能の障害に加えて, 自律神経障害による血圧維持の代償不全が主な要因であると思われた.

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