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- 只野 昌之
- 琉球大学感染分子生物学講座病原生物学
書誌事項
- タイトル別名
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- 1. Dengue Fever
- デング熱
- デングネツ
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抄録
デング熱やデング出血熱/デングショック症候群はフラビウイルス科に分類される四種類のデングウイルスの感染によって惹き起こされる疾患で,重症度の違いはシーケンシャルなデングウイルスの感染,感染時の宿主側の免疫応答,ウイルスの毒力等々が複雑に絡み合って生じると思われ,完全解明にはこれからも詳細な研究努力が必要である.予防可能なワクチンは開発途上にあり,特効的な治療法も無い.とくに,重症度の高い病態では死に至ることもある看過できない感染症である.<br> 起因ウイルスは節足動物媒介性で,主な媒介昆虫はネッタイシマカという熱帯性の蚊である.また,主たる感受性脊椎動物がヒトであることから,本症の流行地は熱帯の人口密集地域である.現在,温帯の日本国内ではネッタイシマカが生息していないので自然感染環が成立せず国内での自然感染は起こらないはずであるが,毎年数十例の発生が報告されている.国立感染症研究所のまとめによれば,報告地の気象条件等には依存せず,ほぼ人口に比例して全国から少数ずつ報告されている.これらの発生例は全てが輸入感染症で,検疫や地方衛生研究所,臨床家の努力(感心?)によって確認された.しかし,これらの報告数は氷山の一角に過ぎず実態は更に多いと推測される.将来,本症への関心が高まればさらに報告数が増え実態が明らかになると思われる.<br> 最近は確定診断の決め手となる実験室内診断法も進歩しており,簡便かつ迅速な抗体検査キットやウイルス遺伝子診断法の普及によって,国立感染症研究所や大学研究機関,各都道府県の公衆衛生研究所はもとより臨床検査機関でも受け入れ易くなった.<br> 本症の世界分布はヒトの移動により世界各地に広がって今に至っていると推察されるが,近年は航空機による移動手段の普及により,本症のグローバル化はとどまるところを知らない.我が国においても,日本人観光客の海外渡航先はアメリカやヨーロッパだけではなく東南アジア,中南米,アフリカと多様になり,旅行者が感染する機会も増えているようだ.そのことは国立感染症研究所のまとめた報告数と渡航先,渡航目的にも現れている.さらに,今問題になっている地球温暖化が進めば,将来の日本もデング感染症の常在地になることは否めず,各方面が準備態勢を整えておくことは重要であろう. <br>
収録刊行物
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- 日本内科学会雑誌
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日本内科学会雑誌 96 (11), 2429-2434, 2007
一般社団法人 日本内科学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001206443859328
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- NII論文ID
- 10020166290
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- NII書誌ID
- AN00195836
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- COI
- 1:STN:280:DC%2BD2sjjtlGqtw%3D%3D
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- ISSN
- 18832083
- 00215384
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- NDL書誌ID
- 9271731
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- PubMed
- 18069294
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDL
- Crossref
- PubMed
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可