骨再生誘導法により顎裂部の閉鎖を行った唇顎裂患者の一治験例

  • 結城 美穂
    広島大学大学院医歯薬学総合研究科展開医科学専攻顎口腔頸部医科学講座歯科矯正学分野
  • 河田 俊嗣
    広島大学大学院医歯薬学総合研究科展開医科学専攻顎口腔頸部医科学講座歯科矯正学分野
  • 谷本 幸太郎
    広島大学大学院医歯薬学総合研究科展開医科学専攻顎口腔頸部医科学講座歯科矯正学分野
  • 宮本 義洋
    宮本形成外科
  • 丹根 一夫
    広島大学大学院医歯薬学総合研究科展開医科学専攻顎口腔頸部医科学講座歯科矯正学分野

書誌事項

タイトル別名
  • A Cleft Lip and Alveolus Patient Treated with Guided Bone Regeneration (GBR) Techniq u e for the Alveolar Bone Defect

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抄録

近年,口唇口蓋裂患者の顎裂部への自家腸骨海綿骨細片移植が積極的に行われ,良好な治療成績が得られている。今回,比較的軽度な顎裂を有する患者において,自家腸骨の移植なく骨再生誘導(GBR)法単独治療によって顎裂部の形態を改善し,良好な治療結果を得たのでその概要について報告する。症例は初診時年齢9歳6ケ月の女子で,上顎前歯の捻転を主訴として来院した。両側口唇裂および左側顎裂を有し,生後3ケ月時に両側口唇形成術を受けていた。上顎歯列の狭窄は認められず,上顎両側中切歯および右側側切歯が90。捻転を呈し,X線写真上ではe上顎右側犬歯,側切歯間と左側中切歯唇側に1委小過剰歯が,上顎左側中切歯,側切歯間に1mm程度の顎裂が確認された。上顎左側側切歯の萌出に合わせて,顎裂部に吸収性乳酸/グリコール酸共重合体バリアメンブレンを用いたGBR法を適用した。全身麻酔下で,上顎左側中切歯唇側の過剰歯を抜去し,周囲歯槽骨を一層切削することにより出血を促した。その後鼻腔底を縫合し,メンブレンを基底面に置き,裂隙部をメンブレンで覆うようにメンブレンと歯肉とを縫合した。足背より採血.した静脈血をメンブレン内に約10cc注入して歯槽堤の形態を修正し,予め剥離した歯肉弁を縫合して手術を完了した。術後3週間でマルチブラケット装置を装着し,上顎左側中切歯の捻転改善および上顎側切歯の唇側移動を行った。術後3ケ月のX線写真上で,顎裂相当部に海綿骨の良好な形成が認められ,同部位への歯の移動が可能となった。このことから,小さな顎裂に対してはGBR法による骨再生が有用な手法となり得ることが明らかとなり,臨床応用の展開が期待される。

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参考文献 (37)*注記

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