ラオス・ビエンチャン近郊地域における日常生活の時空間

書誌事項

タイトル別名
  • Time-spatial allocation of the Daily Lives in Vientiane Suburban Area, Laos

この論文をさがす

抄録

この論文では,ラオスの首都近郊村落における人々の日常生活,とりわけ,生活活動の時空間的配置が現在進行している近代化・都市化・市場経済の浸透によってどのように変化しているのかを明らかにする. 従来,近代産業に基づく賃労働の増加によって,生活時間の規律化が進行することが指摘されてきた(Pred 1978;岡本 1995).同時に,より高速・安価な移動手段の発達は,人々の生活空間の範囲を拡大させてきたが,それは同時に空間的な規律が浸透していくプロセスでもあった.また,このような時間的空間的な規律化と男女の固定的な役割分業の形成は深く結びついている. ラオスの首都ビエンチャン近郊では,市街地に近接した地域を中心に1990年代以降,都市化・産業化が進展している.しかしその一方で,複合的生業が営まれている農村地域も散在している. このような地域における,1990年代から現在までの人々の生活時間・空間について,以下の3つの側面から検討する.1.職業の地域差と日常生活活動の関係:職業構成の地域差は,地域労働市場の状況,自然資源の利用可能性などと関わる複合的生業の可能性とどのように関連しているか.2.モビリティの地域的差異:地域で利用可能な交通機関,自転車・バイク・自動車などの所有状況,また道路整備,乾期・雨期の季節変動と結びついた道路状況の影響をどのように受けているか.3.時空間利用におけるジェンダー差異:1・2と関わり,ジェンダーによって職業構成・モビリティにどのような差異が存在するか. 以上の検討を行うために,ラオス政府統計局によって行われたLECS(Lao Expenditure and Consumption Survey:ラオス消費調査)第2回(1997_-_98に実施)・第3回(2002_-_03に実施)データを用いて分析を行った. ラオス・サイタニー郡の職業構成の変化の特徴としては, 1997・98年から2002・03年の間に賃労働者の増加は見られず,自営層の増加が著しかったことがあげられる(表1). モビリティの地域差の特徴としては,ビエンチャン中心市街地で徒歩が多く,ビエンチャン近郊地域でバイク利用が増加する.その一方で比較的ビエンチャンから離れた地域では徒歩が中心となる. 職業の地域差,日常生活活動との関係,職業・モビリティのジェンダー差異に関する分析については本発表で報告を行う.文献岡本耕平 1995.大都市圏郊外住民の日常活動と都市のデイリー・リズム_-_埼玉県川越市および愛知県日進市の事例_-_.地理学評論 68(1):1-26.Pred, A. 1978. The impact of technological and institutional innovations on life content: some time-geographic observations. Geographical Analysis 10: 345-72.

収録刊行物

参考文献 (2)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205692536320
  • NII論文ID
    10020532919
  • NII書誌ID
    AA1115859X
  • DOI
    10.14866/ajg.2005f.0.91.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ