whole-cell PCRを用いたmicrocystin産生藍藻の簡易・迅速定量法の開発

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  • A Simple and Rapid Method for Detection and Quantification of Microcystin-Producing Cyanobacteria

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抄録

近年、多くの富栄養化湖沼では、有毒藍藻類(アオコ)が異常増殖し、大きな問題となっている。その中でも特に問題となっているのが強力な肝臓毒microcystinであり、WHO(世界保健機構)においても暫定基準が設けられている。今後も湖沼における長期的なアオコの発生が予想されることから、microcystin産生藍藻の初期スクリーニング技術の開発を目的として研究を行った。本研究では迅速性、簡便性の高いwhole-cell PCRを用いて、分子生物学的なmicro-cystin産生藍藻の検出ならびに定量を試みた。まず、純粋培養株のMicrocystis viridisを用いてwhole-cell PCRを行った結果、DNA抽出を行ってPCRを行った系と同じDNA配列の増幅産物が確認された。また、有毒株と無毒株を用いてのwhole-cell PCRでは、有毒株のみを検出することに成功した。検出感度においては、細胞濃度が104 cells/ml(およそ60 cells/PCR reaction)という濃度でも検出可能であった。また、whole-cell PCRはHPLCによるmicrocystinの検出と比較し、およそ3分の1の時間でmicrocystin産生藍藻を検出可能であった。次に、環境サンプルを用いて実験を行った。実際にアオコが発生している湖沼から採水したサンプルのwhole-cell PCRを行った結果、純粋培養株を用いて行った実験と同様に増幅産物が確認され、対象湖沼にはmicrocystin産生藍藻が存在することが明らかとなった。さらに、whole-cell PCRとcompetitive PCRを組み合わせたcompetitive whole-cell PCRを用いてmicrocystin産生藍藻の定量を行ったところ、簡便に定量が可能であることが明らかとなった。これら実験の結果から、whole-cell PCRおよびcompetitive whole-cell PCRは迅速性、簡便性、高感度、経済性を持ち合わせた技術であることが証明された。したがって、whole-cell PCRおよびcompetitive whole-cell PCR は、microcystinリスクアセスメントの初期段階で行われる、microcystin産生藍藻の初期スクリーニング技術として利用できることが証明された。

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