大学病院における高齢者早期退院の阻害要因に関する検討

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タイトル別名
  • Studies on factors related to delayed discharge of elderly patients from university hospitals
  • 大学病院における高齢者早期退院の阻害に関する検討
  • ダイガク ビョウイン ニ オケル コウレイシャ ソウキ タイイン ノ ソガイ ニ カンスル ケントウ

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抄録

目的:大学病院を含む特定機能病院では社会的入院がもたらす医療資源の損失は非常に大きいが,退院後も効果的な医療を患者が受けられることが必要不可欠である.そのため,大学病院における高齢入院患者の早期退院を阻害する要因を明らかにし,今後の政策面·各現場での改善策の検討を目的とした.方法:平成15年度に全大学病院に退院支援の現状に関するアンケート調査を実施.5大項目(家族·心理的側面·身体·医療処置·環境)に分類した34小項目の質問に対する回答の定量的評価を行い全国の共通傾向や地域差に関する検討を行うとともに,自由記述欄の回答をグラウンデッド·セオリーに則りカテゴリー化し,各病院から寄せられた意見を更に抽出し検討した.結果:アンケートの最終回収率は73.6%(全大学病院125カ所中回答92件).全国共通の阻害要因に「家族」「心理的側面」「身体」が挙げられ,特に「家族」で高スコアであった.逆に地域差が認められた要因は「医療処置」「環境」であり,関東で「医療処置」が高スコア,北海道·東北では低スコアであった.また九州·沖縄の「環境」が特に低スコアであった.同時期の厚生統計では,関東の65歳以上人口10万対病床数が他地方に比べ少なかった.自由記述欄の回答から,「政策的な問題」と「連携の問題」が浮上し,更に「政策的な問題」は[医療費抑制の是非][医療格差][連携の機能不全][その他]に四分類され,「連携の問題」は[チーム医療][院外との医療連携]に二分類された.結論:国家規模では医療制度と国民の間の乖離や,医療現場での福祉業務が機能不十分である面が抽出された.また全国共通的な傾向や地域差のある要因を捉えることで現在退院を阻害している背景を検討することが出来た.国は現状のモニタリングと同時に医療に関する国民の認識を向上するための啓発活動等が必要である.<br>

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