パロキセチン内服中に低ナトリウム血症を来し,SIADHと診断された食思不振の高齢患者

  • 大田 秀隆
    東京大学大学院医学系研究科 加齢医学講座
  • 山口 泰弘
    東京大学大学院医学系研究科 加齢医学講座
  • 山口 潔
    東京大学大学院医学系研究科 加齢医学講座
  • 江頭 正人
    東京大学大学院医学系研究科 加齢医学講座
  • 秋下 雅弘
    東京大学大学院医学系研究科 加齢医学講座
  • 大内 尉義
    東京大学大学院医学系研究科 加齢医学講座

書誌事項

タイトル別名
  • Paroxetine-induced hyponatremia in an elderly man due to the syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone
  • 症例報告 パロキセチン内服中に低ナトリウム血症を来し,SIADHと診断された食思不振の高齢患者
  • ショウレイ ホウコク パロキセチン ナイフクチュウ ニ テイナトリウム ケツショウ オ キタシ SIADH ト シンダンサレタ ショクシ フシン ノ コウレイ カンジャ

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抄録

今回我々は,パロキセチン内服中に低ナトリウム血症を来し,SIADHと診断された食思不振の高齢患者の一例を経験したので,文献学的考察を加え報告する.82歳男性,うつ状態に対してスルピリドを投与されていたがパーキンソニズムの副作用のため中止しパロキセチン内服へ変更後,低ナトリウム血症が出現,SIADHと診断された症例.約4年前から食思不振増強,体重減少が目立っていた.表情がない,無口,不安感が強い症状があり,うつ状態に対してスルピリド内服開始したが,パーキンソニズムの副作用のため同剤からパロキセチン内服へ変更した.その後,食事,飲水ができない状況続き,当院へ緊急入院.入院中,血清ナトリウム126mEq/mlと低下.ADH測定感度以上,血漿浸透圧242mOsm/kg,尿浸透圧439mOsm/kg,尿中ナトリウム100mEq/l以上とSIADHの診断を全て満たした.中枢疾患や悪性腫瘍は否定され,薬剤性によるものと考え,パロキセチンの内服中止した.その後血清ナトリウム値は正常化し,自主的な経口摂取が可能となり退院した.SSRIによるSIADHは高齢者に多い傾向にあり,低用量でも発症し,SSRI投与後数日から数週間で発症することが報告されている.SIADHにより生じた低ナトリウム血症の症状(全身倦怠感,食欲不振など)は,抑うつ状態と類似しているため鑑別が困難になる症例もある.高齢者において,今後SSRIの使用頻度が増加してくると思われるが,投与開始後は,薬剤性SIADHの可能性を念頭に置いた上で,症状変化に十分注意し,定期的な電解質の測定が不可欠と考えられる.<br>

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参考文献 (12)*注記

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