限局性前立腺癌に対する三次元原体照射法における 至適照射体位に関する研究

  • 加藤 貴弘
    豊橋市民病院放射線技術室 名古屋大学大学院医学系研究科医療技術学専攻医用量子科学分野
  • 小幡 康範
    名古屋大学医学部保健学科
  • 柳川 繁雄
    岐阜県立岐阜病院放射線科
  • 石原 俊一
    名古屋大学医学部放射線科
  • 青山 裕一
    名古屋大学大学院医学系研究科医療技術学専攻医用量子科学分野 名古屋大学医学部附属病院放射線部
  • 島田 秀樹
    豊橋市民病院放射線技術室
  • 村山 洋
    豊橋市民病院放射線技術室

書誌事項

タイトル別名
  • A STUDY OF THE OPTIMAL TREATMENT POSITIONING IN THE TREATMENT OF PROSTATE CANCER WITH THREE-DIMENSIONAL CONFORMAL RADIOTHERAPY

この論文をさがす

抄録

限局性前立腺癌に対する外部照射では,隣接するリスク臓器(Orgon at risk;OAR)である直腸や膀胱の被曝線量を抑えつつ,臨床標的体積(clinical target volume:CTV)である前立腺,精mに対し,いかに高線量を投与することができるかがポイントとなる.これを実現させる技術的アプローチとして照射方法の工夫,イメージガイド下(image guided radiothrapy)での照射,腹臥位による照射などが提案されている.これらのうちで腹臥位照射の有効性に関しては議論のあるところであり,CTVと直腸の距離が離れる腹臥位が良いとする意見と照射位置精度が良好である仰臥位が良いとする意見の両論が存在しているのが実状である.そこで,本研究ではこの 2 つの観点を考慮に入れたうえで限局性前立腺癌に対する三次元原体照射法において照射体位の違いがOAR線量に及ぼす影響について三次元治療計画装置を用いてシミュレーションを行うことにより,至適照射体位を明らかにできないかと考え検討を試みた.その結果,照射位置精度の不確定要素を考慮して設定される計画標的体積(planning target volume;PTV)マージンを両体位において同一にして評価した場合,直腸線量の低減効果は腹臥位において有意に優れていたが,腹臥位のPTVマージンを 1 mm加算したものと比較するとすでに両者に有意差はなくなり,3 mm加算したものと比較すると逆に仰臥位が有意に優れるという結果が得られた.このことは腹臥位にすることで離れるCTVと直腸との距離は比較的小さく,腹臥位にすることで増す照射位置精度の不確定さを大きく凌駕するほどではないことを意味する.したがって腹臥位を採用する際,そのメリットを生かすためには照射位置精度を少なくとも仰臥位と同程度に保つ必要性があることが明らかとなった.どちらの照射体位が優位であるかを一元的に結論付けることはできないが,腹臥位での照射位置精度を高めることは決して容易ではないことから,マンパワー,マシンタイムに余裕がない本邦における多くの治療施設においては仰臥位を採用する方が現実的と言える.最終的にどちらの体位を選択するかはそれぞれの特徴を把握したうえで施設毎に判断していく必要があり,本研究はそれを判断する際の一助になるものと思われる.

収録刊行物

被引用文献 (1)*注記

もっと見る

参考文献 (22)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ