上腹部症状のメカニズムと病態

  • 城 卓志
    名古屋市立大学大学院消化器・代謝内科学

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Abstract

耳鼻科領域の咽喉頭異常感症のように, 消化器内科領域でも, 明らかな病変は認めないが慢性的に腹部症状を訴える例が多く, 最近ではFunctional Dyspepsia (FD) として注目を集めている. また, 胸やけ症状を主体とする胃食道逆流症 (GERD) の中でも, 内視鏡所見のない非びらん性逆流症 (NERD) が新たな病態として重要度を増している. ここでは, 愁訴のみで明らかな病変のない病態について考察を深めたい.<BR>健康診断受診者の腹部症状の検討では, 頻度は女性に多く, 胸やけや喉頭違和感は加齢に伴い増加するが, 他の多くは逆に減少する. 加齢に伴う変化のメカニズムは不明だが, 感受性の問題は注目される. 腹部症状とH. pylori感染の関係は否定的な意見が多いが, 若い感染者に心窩部痛や胸やけの頻度が有意に高い.<BR>また, GERD症状の検討では, 全例の2/3がNERDであった. NERDは女性の頻度が高く, 低体重で, 食道裂口ヘルニアの頻度が低く, H. pyloriの感染率が高いなど従来のGERDとは異なる背景を持つ. また, QOLはむしろ不良で, FD症状を合併する例が多く, 酸分泌抑制薬の効果は通常のGERDに比べ弱い. 不定愁訴の疾患の病態には不明な点が多いが, 今後さらに重要度が増加すると考えられ, 新しい治療戦略の確立が望まれる.

Journal

  • Stomato-pharyngology

    Stomato-pharyngology 20 (3), 253-256, 2008

    Japan Society of Stomato-pharyngology

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