カイコ神経ペプチド研究の最近のトピックス

  • 田中 良明
    農業生物資源研究所昆虫科学研究領域制御剤標的遺伝子研究ユニット

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  • カイコ シンケイ ペプチド ケンキュウ ノ サイキン ノ トピックス

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Abstract

昆虫の神経ペプチド研究は、1922年にポーランド人Kopecがおこなったマイマイガを用いた脳ホルモンの研究に端を発している。この分野におけるカイコの貢献は大きく、日本の研究グループによって前胸腺刺激ホルモン(PTTH)、 インシュリン様ペプチド(ボンビキシン)、休眠ホルモン(DH)など昆虫の発育に重要な役割を担うペプチドが単離・構造決定された。これは、カイコが外科手術や器官培養が容易な大型昆虫であったことや、当時まだ養蚕業が盛んでペプチドの抽出材料となるカイコを百万頭単位で入手可能であったこと、そして約30年にわたり粘り強く研究を続けた研究者達の努力が、体内に極微量にしか存在しないペプチドの精製を可能にしたのである。ところが、21世紀になるとキイロショウジョウバエをはじめとした数種昆虫の全ゲノム解読や質量分析技術等の発達により、わずか数十個の脳からでも神経ペプチドの単離・構造決定が可能になった。また、従来の生物検定ばかりでなくRNA干渉(RNAi)や遺伝子ノックアウト、マイクロアレイなどによってショウジョウバエのような小型の昆虫でも遺伝子の機能解析が可能になった。カイコでも最近になって全ゲノムの解読や、遺伝子組み換え技術、マイクロアレイなどの遺伝子解析ツールが整いつつある。本稿では、ゲノム解読以降のカイコ神経ペプチド研究の進展について紹介すると共に、今後の展開について考察する。

Journal

  • Sanshi-Konchu Biotec

    Sanshi-Konchu Biotec 77 (2), 2_097-2_103, 2008

    The Japanese Society of Sericultural Science

References(37)*help

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