カイコを中心とした幼若ホルモン(JH)活性の発現と調節機構研究

  • 塩月 孝博
    農業生物資源研究所昆虫科学研究領域制御剤標的遺伝子研究ユニット

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Other Title
  • カイコ オ チュウシン ト シタ ヨウジャク ホルモン JH カッセイ ノ ハツゲン ト チョウセツ キコウ ケンキュウ

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Abstract

近年の昆虫内分泌の分子生物学研究では、カイコは欧米で用いられるタバコスズメガに並んで永年にわたって供試され、その成果の蓄積も大きい。モデル昆虫として知られるショウジョウバエは2001年にゲノム情報データベースが構築・公開されるとともに、人為的な遺伝子のノックアウト、あるいは過剰発現が容易に行えることから、実験昆虫として優位性を保っている。実際、内分泌研究においてもショウジョウバエでは脱皮ホルモンの分子作用機構が詳細に調べられている。しかし、幼若ホルモン(JH)の作用機構研究については外部から投与した際の反応性が低いこと等の理由により、必ずしもJH研究の実験昆虫として適しているとはいえない。最近では甲虫のコクヌストモドキもゲノムが解読され、RNA干渉法(RNAi)実験の効果が高いので、用いられるようになってきた。ショウジョウバエやコクヌストモドキに比べ、カイコは体サイズも大きく外科的処理や器官ごとの遺伝子・タンパク質の分析が可能であり、カイコゲノム情報データベースが充実し、形質転換体作出技術によって目的とするタンパク質を過剰に発現させることも可能となってきた。JHは、脱皮変態の調節、休眠の誘導・覚醒、フェロモン生合成、生殖腺の成熟、卵の発育などの個体発育から、体色変化、相変異、階級分化など個体群の調和・維持といった集団レベルまで、発生・分化のみならず広く昆虫の生理に多面的に関わっている。それらの生物活性は生合成と分解によるJH濃度の正確な調節と、受容を含む情報伝達の各過程で制御されている。ここでは、その各過程における制御機構と、それに係わる酵素・タンパク質の性質、遺伝子、機能解明についてカイコを中心とした研究を紹介する。

Journal

  • Sanshi-Konchu Biotec

    Sanshi-Konchu Biotec 77 (2), 2_105-2_110, 2008

    The Japanese Society of Sericultural Science

References(26)*help

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