内耳疾患の治療をめざして—基礎研究の最前線

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  • ダイ109カイ ニホン ジビ インコウ カガクカイ ソウカイ シンポジウム ナイジ シッカン ノ チリョウ オ メザシテ キソ ケンキュウ ノ サイゼンセン イデンシ ドウニュウホウ カギュウ ユウモウ サイボウ ノ サイセイ ト チョウカク ノ カイフク
  • [Treatment of labyrinthine diseases--the frontier of experimental studies--Introduction of genes (regeneration of cochlear hair cells and restoration of auditory function)].
  • —遺伝子導入法 (蝸牛有毛細胞の再生と聴覚の回復)—

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抄録

高度感音難聴は主に蝸牛コルチ器にある感覚細胞 (外有毛細胞と内有毛細胞) の消失による内耳障害によって起こるとされている. いったん失われた有毛細胞は自然に再生することができないため, 有毛細胞消失による高度感音難聴は不可逆性であり半永久的に存続する. このような疾患は根治的治療が望めず, 患者のQOLを著しく損なうことになる. そこで損失した聴力を回復させるには, 聴覚機能を持つ有毛細胞を再生させることが必要になると考えられる. 有毛細胞を再生させる方法として, ウイルスベクターによる遺伝子導入法を用いて, 内耳障害後の蝸牛に残存する支持細胞の形態を有毛細胞へと形質変換させることが考えられる. 以前よりMath1として知られ, A basic helix-loop-helix転写因子の一つであるAtoh1 (a mouse homologue of the Drosophila gene atonal 1) は胎生期の原始細胞から有毛細胞へ分化させるのに必要な遺伝子である. われわれは内耳障害後のモルモットの蝸牛内にアデノウイルスベクターを用いてAtoh1遺伝子を導入し, 有毛細胞の再生および聴覚閾値回復の可能性について検討した. その結果, 内耳障害後の蝸牛に有毛細胞の再生が観察され, さらに聴覚機能が回復することが証明された. 本研究はAtoh1遺伝子導入による難治性内耳疾患治療の可能性を示唆している.

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