慢性腎不全患者に発症し,治療に難渋した尿路上皮癌の1例

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タイトル別名
  • Difficult management of urothelial cancer in a patient with chronic renal failure: a case report
  • 症例報告 慢性腎不全患者に発症し,治療に難渋した尿路上皮癌の1例
  • ショウレイ ホウコク マンセイ ジンフゼン カンジャ ニ ハッショウ シ チリョウ ニ ナンジュウ シタ ニョウロ ジョウヒガン ノ 1レイ

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抄録

症例は血液透析歴1年以内の59歳,男性.透析導入4か月前に左腎盂癌を発症し,左腎尿管摘出術を施行したが,その後短期間に膀胱再発を繰り返した.膀胱腫瘍に対して,経尿道的膀胱腫瘍切除術(以下TURBT)を行い,膀胱再発予防としてマイトマイシンCの膀胱内注入療法を行ったが,これが誘因となったと思われる慢性炎症や出血性膀胱炎が発現した.また,膀胱癌再発を繰り返し,再発ごとにT stageや異型度が進行し最終的には膀胱全摘術が必要となった.さらに膀胱全摘術1年後にCTにて右下部尿管に造影効果のある腫瘤病変が認められ,右腎尿管摘出術が必要になったが,術前に急性膵炎を発症し敗血症に至って亡くなった.慢性腎不全患者は乏尿,アシドーシス,免疫能低下などの病態を有しており,膀注療法においては,薬剤の選択,薬剤濃度や投与方法を検討し,より効果的な再発予防と血尿などの合併症予防に注意が必要である.また再発を繰り返す血液透析患者の尿路上皮癌の治療では,保存的治療による尿路の温存を追及するよりも根治性を高めるための上部尿路の摘除も組み合わせた早期の膀胱全摘術も治療選択肢のひとつとして検討すべきである.

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