メタン発酵液からのリン回収プロセスにおける晶析操作

  • 島村 和彰
    (株)荏原製作所環境事業カンパニー水処理事業本部環境開発統括部 水環境開発室
  • 黒澤 建樹
    荏原環境エンジニアリング(株)技術建設本部技術統括部 技術統括室
  • 平沢 泉
    早稲田大学理工学術院先進理工学部 応用化学科

書誌事項

タイトル別名
  • A System having a Crystallization Process for Phosphorus Recovery from Methane Fermentation Digested Sludge
  • メタン ハッコウエキ カラ ノ リン カイシュウ プロセス ニ オケル ショウセキソウサ

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抄録

固形物のメタン発酵処理では,窒素,リンを高濃度に含む消化液が発生する.筆者等は,水処理系のリン負荷低減,メタン発酵槽内部やその周辺機器のスケール防止,リン資源の回収を目的として,消化液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を積極的に析出させて回収するプロセスを考案した.プロセスは,晶析工程,液体サイクロンによる分離工程,洗浄工程,低温乾燥工程からなる.本報では,固形物濃度が数%含まれる消化液を対象としたMAPの最適な晶析操作条件と乾燥条件を把握すると共に,処理量2 m3/hの実規模スケールの装置を作製し,16か月に渡り実証試験を行った結果を報告する.<br>MAPを液体サイクロンで分離するために,晶析工程では核発生を抑制する必要がある.ラボ実験より,リアクタ内のMAPの流動状態を良好に保つこと,低過飽和度で操作すること,種晶充填量あたりのMAP晶析速度を適切に保つことで,MAPの核化が抑制され,結晶成長が優先的となることを見出した.また,乾燥工程では,乾燥温度を70°C以下にすることでMAPは転移することなく現状の形態を維持できることが明らかとなった.一連のプロセスの実証試験において,晶析工程でのPO4–P除去率は85%以上であり,良好に反応を行うことができた.また,反応したリンのうち,核化した割合は約10%であり,反応したリンの約90%は種晶表面で成長したので,良好に消化液からMAPを分離することができた.乾燥工程から回収したMAPの含水率は0.1%以下,MAPの純度は92.6%,有害金属の含有量は肥料取締り法で定める基準値以下であったことから,MAPの肥料製品としての高い品質を保っていることが確認できた.

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参考文献 (20)*注記

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