任意形状アレーを用いた微動探査における位相速度の直接同定法

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タイトル別名
  • Direct estimation method to extract phase velocities of Rayleigh waves in microtremors using arbitrary geometry array
  • ニンイ ケイジョウ アレー オ モチイタ ビドウ タンサ ニ オケル イソウ ソクド ノ チョクセツ ドウテイホウ

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抄録

 微動探査法における位相速度の推定には,主にSPAC法とF-K法が用いられている。しかしこれらの従来法は,観測点の展開に関してともに問題を有している。すなわち,SPAC法ではアレー形状が円形に限定され,円周上の観測点は等間隔に配置しなければならない (最少観測点数は4点)。したがって建物や道路が妨げとなって所望のアレー展開が困難になる場合がある。一方F-K法では,アレー形状の制約は無いものの10点前後の観測点が必要なため,アレーの展開に多くの労力が必要となる。<br>  こうした従来法の問題を克服するために,筆者らは任意形状のアレーを用い,かつ観測点数の少ない新しい位相速度の推定法を導いた。本稿では,これを直接同定法と呼ぶ。この方法はレーリー波の2点観測で得られる複素コヒーレンス関数 (CCF) を基本量として任意形状アレーの出力を理論的に表現し,CCFの理論値と観測値の二乗残差を最小とする位相速度を探索によって求めるものである。本稿では,この新しい位相速度推定法の導出方法を示すとともに,基本的な性質を明らかにするために実施した数値実験および実証試験の結果を示すものである。数値実験については,1)無限級数であるCCFを,計算時には有限の項で近似する必要があるため,その近似方法,2)CCFに含まれる振源パラメータを用いた拘束条件の設定方法,3)入射方位の影響,4)観測点数と推定値の関係,の4つの項目について検討を行った。また実証試験においては,屈折法に基づく理論位相速度および従来法による推定結果と比較を行い,直接同定法によって従来法と同等の推定が可能であることを確認した。直接同定法は最少3点の任意形状アレーで位相速度を推定できるとともに,既設の地震観測網等の観測記録にも適用可能であることから,微動探査法の適用範囲を大きく拡大できるものと考えられる。<br>

収録刊行物

  • 物理探査

    物理探査 62 (3), 339-350, 2009

    社団法人 物理探査学会

被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (21)*注記

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