脳梗塞:炎症の制御を標的とした治療戦略の可能性

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タイトル別名
  • Anti-inflammation strategy: potential brain protection in cerebral ischemia
  • ノウコウソク エンショウ ノ セイギョ オ ヒョウテキ ト シタ チリョウ センリャク ノ カノウセイ

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抄録

脳梗塞急性期の治療薬として現在国際的に使用されているのは血栓溶解薬のみである.しかしその恩恵を受けることのできる患者は脳梗塞全体の5%以下であり,脳梗塞に有効な保護薬の開発が期待される.これまでグルタミン酸受容体拮抗薬をはじめとした神経細胞を主な標的とした治療薬は基礎実験では有効なものの臨床試験では有用性が証明されなかった.神経細胞だけでなく脳梗塞進展に密接に関連しているミクログリアや脳血管内皮細胞でも虚血侵襲により炎症反応が誘導される.さらに血栓溶解療法に伴って発生する血液脳関門障害,出血性脳梗塞の発生にも血管周囲での炎症反応が関与していると想定される.炎症制御を標的とした治療薬の開発は有望と考えられるが,脳梗塞治療手段として取り入れる場合には,炎症反応は組織障害性に働くだけでなく,虚血耐性の獲得,組織修復機転,組織再生過程など内因性の脳保護機転にも関与しているため,炎症を制御する部位,時間,標的細胞などを十分に考慮する必要があると考えられる.現在までに得られた基礎実験,臨床データからは,脳虚血早期の主としてミクログリア,脳血管壁周辺での炎症反応を制御することが,脳保護効果を発揮する上で有望ではないかと考えられる.<br>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 134 (4), 202-206, 2009

    公益社団法人 日本薬理学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (70)*注記

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