病理学的にみたアスベスト関連疾患の診断

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  • Diagnosis of Asbestos Exposure-related Diseases Based on Pathological Features

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抄録

日本で補償·救済の対象となるアスベスト曝露の関連疾患は,非腫瘍性疾患としては石綿肺,良性石綿胸水,びまん性胸膜肥厚が,腫瘍性疾患では肺がん,中皮腫があげられるが,いずれも病理学的立場からの診断における問題点が指摘できる.石綿肺については,末梢肺での細気管支周囲の線維化は小葉中心から末梢へ拡がることが特徴とされるが,近年では蜂窩肺型ないしはUIP型のアスベスト肺が数多く観察され,診断基準として,沈着するアスベスト小体あるいは繊維の存在に頼らざるを得ない.胸水細胞診でがん性胸膜炎と診断できる率は高いが,中皮腫の診断率は約30%と低い.これら胸腔の悪性腫瘍の存在を否定してはじめて,良性石綿胸水は診断できる.アスベスト曝露による肺がんは腫瘍の病理学的所見から診断できるものではなく,肺がんの発生リスクを2倍に高める量の曝露があったことを,画像所見あるいはアスベスト小体ないし繊維の定量で証明できることを根拠としている.様々な調査から日本における中皮腫の病理診断は,現状では約10%程度は誤診であると考えられる.適切な免疫組織化学的染色を行うことなどによって,中皮腫の病理診断の精度をあげていく努力が必要である.<br>

収録刊行物

  • 肺癌

    肺癌 49 (1), 83-87, 2009

    特定非営利活動法人 日本肺癌学会

参考文献 (23)*注記

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