膀胱癌における中心体複製異常の臨床的意義

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  • 松山 豪泰
    山口大学大学院医学系研究科情報解析医学系・泌尿器科学講座

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タイトル別名
  • Clinical Significance of Centrosome Amplification in Bladder Cancer
  • ボウコウ ガン ニオケル チュウシンタイ フクセイ イジョウ ノ リンショウテキ イギ

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抄録

【背景】中心体は細胞分裂時,紡錘体極を形成するタンパク複合体であり,その複製は厳密に調節されている.近年,種々の癌腫において中心体複製異常(1細胞あたり3個以上の中心体が存在)が報告されている.そこで膀胱癌における中心体複製異常の関与とその臨床的意義について研究を行った.【対象と方法】中心体複製異常とゲノム変異および細胞周期関連タンパクとの関連を基礎検討する目的で膀胱癌経代培養細胞株8株を対象とした.また中心体複製異常の臨床的意義を検討する目的で膀胱癌臨床検体102例を対象とした.中心体複製異常と検討には抗ペリセントリン抗体を用いた蛍光免疫染色を,ゲノム変異検索目的にはcomparative genomic hybridization(以下CGH)法,fluorescence in situ hybridization(以下FISH)法を,細胞周期関連タンパク検索目的には免疫組織染色法をそれぞれ用いて実験を行った.【結果】培養細胞を用いた基礎検討結果より1)中心体複製異常細胞株の定義は中心体複製異常細胞が全体の5%以上を占めること,2)20番染色体13.2領域のコピー数増加は複製異常細胞株に特異的な変化であり,同領域上に存在するAurora-A(中心体の成熟化や細胞質分裂を調節するキナーゼタンパクをコード)のコピー数増加および同タンパクの過剰発現が中心体複製異常株でみとめられること,3)これまで膀胱癌でもっとも高頻度にコピー数異常が報告されている7,9,17番染色体コピー数異常は中心体複製異常細胞に合併して認められること,4)p53,BubR1などの細胞周期関連タンパクの過剰発現が中心体複製異常細胞に合併していることが明らかになった.臨床検体を用いた検討結果では59例(57.8%)に中心体複製異常を認め,多変量解析により同複製異常は膀胱癌における臨床進展の独立予後予測因子(Risk ratio:3.12,95% CI:1.36-13.4,p=0.0039)であった.【結語】中心体複製異常はp53異常と20番染色体13.2領域のコピー数増加によるAurora-A過剰発現により発症しやすく,膀胱癌における予後予測因子となりうることが示唆された.

収録刊行物

  • 山口医学

    山口医学 59 (1), 9-15, 2010

    山口大学医学会

参考文献 (25)*注記

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